日本重症心身障害学会誌
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O-2-C34 横浜市における病院空きベッドを利用した重症児短期入所システム
小林 拓也
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2014 年 39 巻 2 号 p. 274

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抄録
横浜市は全重症児(者)1067人に対し、重症児施設の長期入所は約150床と少なく、さらに、在宅重症児者(在宅児)866人に対し短期入所は約20床と明らかに不足している。在宅児のうち459人が医療ケアを要する。医療ケアが不要か軽度の医療ケアレベルの在宅児を受け入れる福祉施設は少しずつ増えてきているが、それ以上の医療ケアを要する在宅児を受け入れ得るのは重症児施設のみであり、特に、人工呼吸器・酸素・気管切開のいずれかを要する在宅児176人の短期入所先の確保は急務である。 また、横浜市の重症児医療は、児は2病院、者は1重症児施設に集中していることがもう一つの問題点である。地域基幹病院(地域病院)の重症児医療への関与は薄く、また、在宅医療も未成熟で、在宅児への医療を地域の中で提供できる体制にはない。 横浜市では2012年よりメディカルショートステイシステム(MSS)という地域病院の空床を利用し、在宅児の短期入所を受け入れるシステムを開始した。対象は医療ケアを要する在宅児で、利用要件はレスパイトに限らず、緊急の要件にも対応するというものである。地域病院等7病院の小児科病棟の協力でスタートし、現在は、内科病棟を含む10病院が参加している。このMSSは、行政が調整を行い受け入れ病院を探すというネットワーク化が特徴である。 2014年5月現在、90名が登録し、2012年度(7−3月)16件、2013年度43件、2014年度(4−5月)7件、計66件と利用実績は伸びている。呼吸器装着児の受け入れは段階的にという前提でスタートしたが、初年度より受け入れてくれる病院もあり、21件(32%)が呼吸器装着児である。利用希望に対し受け入れ不可となった事例はない。利用事由は緊急要件が35件(53%)と最も多く、レスパイト目的は9件(14%)と少ない。 在宅児の短期入所先確保のみならず、地域病院の重症児医療参加の意義もあり、在宅児の地域生活支援において意義ある試みと考え報告する。
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© 2014 日本重症心身障害学会
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