抄録
はじめに
重度脳損傷幼児に特異に見られる高度下肢変形の予防を目的に、足部への整形外科的手術と理学療法、作業療法を実施した。足関節の状態が整い、足底を支持面とした姿勢制御を促したことで、座位や立位姿勢に挑戦できるようになり、日常のケアに対する適応の幅が広がった。重度脳損傷児の下肢変形に対する早期治療の可能性を考察した。
事例紹介
在胎33週、1840g、胎盤早期剥離による緊急帝王切開にて出生。Apg0/0、10分後0/0。出生後より経管栄養、人工呼吸管理。生後10カ月時に気管切開、喉頭気管分離術。生後1歳6カ月時に出生病院のNICUより当センターに転院となった。入所時、バイタルは比較的安定していたが、日常の姿勢は背臥位であった。頭部右回旋、後頸部短縮、肩挙上位で固定され、手指は屈曲、足関節には強い外反過背屈変形が認められた。また、わずかな接触や重心移動に対して、股関節外転、膝関節伸展の過緊張を示し、医療的ケアや更衣などを困難にしていた。足関節外反過背屈を修正し、下肢変形を予防する目的で、1歳8カ月時に両側長腓骨筋腱切離延長術、左長趾伸筋延長術を実施した。
結果と考察
出生直後から1年6カ月間、背臥位で過ごし、下肢の支持や運動経験が少なく、下肢変形が構築されつつあった。しかし、整形外科的手術により足部の状態が整い、姿勢制御の学習機会を得ることができた。また、術前から足底の支持感覚を導入し矯正する目的で、チームで相談して靴型弾性装具を使用した。術後引き続き靴型弾性装具をつけて、セラピィで、足底支持や、膝−股関節−骨盤−体幹へと筋活動を連動させて姿勢制御を促した。このことで、過剰な固定が軽減し、姿勢変換への適応が広がり日常のケアが容易になった。事例は2歳3カ月時に退所して在宅生活を始めた。今後の下肢変形や姿勢適応の経過をフォローしていきたい。