抄録
はじめに
重症児(者)では胸郭扁平化に伴い腕頭動脈との交叉部において気管が扁平化していることが多く、気管腕頭動脈瘻のリスクが上がる原因になっている。重症児(者)の気管扁平化の割合などについての報告がないようであるのでCT画像を用いて検討した。
方法
東京都立東部療育センターにて胸部CT検査を受けている100名(ID番号順)のうち、胸部側弯が強く(およそコブ角100度以上)CT画像での計測が困難な14例を除外した86名(平均年齢25±13歳)を対象とした。寝返り不可群73名、と寝返り以上群13名に分けて検討した。気管が腕頭動脈と交叉するスライスにおいて、気管前後径・横径、胸郭前後径・横径、縦隔前後長、椎体‐左胸郭間距離(側弯の指標)、両側傍脊柱筋の平均CT値(筋萎縮の指標)を測定した。
結果
気管扁平率(気管前後径÷横径)の分布は、0.6と1.1の二つのピークをもつ二峰性を示した。寝がえり不可群では気管扁平率0.8以下は32名(44%)、0.6以下21名(29%)であった。寝返り以上群では気管扁平率0.8以下1名(8%)、0.6以下は無かった。縦隔前後長は寝たきり群で26.8±8.0mm、寝返り以上群では34.9±9.0mmと有意(p = 0.002)に寝たきり群で短くなっていた。気管扁平率と縦隔前後長や胸郭扁平率の間には弱い相関を認めた(R2 = 0.27、 0.36)。相関が弱い原因としては、気管が椎体の左右どちらかにずれている場合に縦隔前後長が短くても気管扁平にならない症例があるためと考えた。側弯や傍脊柱筋筋萎縮と気管扁平との間に相関は認めなかった。年齢では10歳以下16名では気管扁平率0.6以下の症例は無く気管扁平は10歳以降に進行すると考えた。
考察
寝返り不可の重症児(者)の気管扁平率は、寝がえり可能以上の障害児(者)や一般人口と比べて著しく高い。気管扁平は、側臥位時間を増やすなどの姿勢管理で予防可能であると考えた。