抄録
はじめに
重症心身障害者施設における進行性疾患を持つ利用者は機能低下から積極的な活動性を得られないことも多い。今回、個別作業療法をきっかけに意欲がわきADL・QOLが向上、同疾患の同胞の意欲も高まった例を報告する。
症例紹介
ケースA:マリネスコ・シェーグレン症候群の20代女性。発症+×年に重症心身障害者施設に入園。上肢機能訓練処方(食事動作)。呼吸器装着。座位不可。MMTは体幹1レベル・上肢左右共1〜2-レベル・手指2-レベル。握力左右0kg。日常生活動作全介助。構音障害あり声量乏しいが意思伝達可。食事動作の介助量軽減から他のADL動作への導入、QOL向上につなげるよう目標設定した。ケースB:同疾患の20代女性。Aの同胞。呼吸器装着。頸・右肘関節・体幹に可動域制限あり。口唇閉鎖不可・下顎と分離した舌上下運動は可。喉頭分離術施行済だが摂食拒否あり注入が主。
経過
ケースA:(1)太柄スプーンによる食事動作:左手使用し約1年半で操作ほぼ自立。(2)和皿作り:周囲の声かけもあり意欲向上、積極的な上肢使用見られる。表情に活気見られ作成経過を話すようになる。口唇閉鎖可能となり他ADLにも積極的に挑戦(ボタンや鼻空吸引等)。(3)指編み:自ら申し出あり、OT時間以外も実施し3本作成、贈り物とした。X+3年で握力右6・4kg左7・8kgとなった。ケースB:X+2.5年Aの経過を見て「Aのように食べたい」とスタッフに話があった。(2)摂食訓練処方され間接・直接訓練実施した。上唇での捕食や舌併用したストロー飲みが可能となった。
考察
生活の場である病棟はより具体的な支援につながりスタッフの励ましも得られやすい。利用者の意欲に沿うことで様々な活動性やQOL向上に結びついたと思われる。ケースAの筋力低下は廃用性由来も考えられ進行性疾患であっても積極的なアプローチからADL・QOLが向上する可能性が示唆された。また、同疾患であるケースBにはAの変化が希望を与え意欲向上したと思われる。