抄録
はじめに
生後11カ月でけいれん発作に伴う急性脳症を発症した症例の母子入園における理学療法を担当し、姿勢変換を受け入れられるようになった経験を得たので報告する。
症例紹介
1歳女児、感冒症状よりけいれん発作を起こし、意識障害継続したため脳症と診断、ステロイドパルス療法(2クール)、抗菌剤、抗ウイルス薬投与された。発症7日目、頭部MRIにて異常所見を認めた。発症2カ月後、自宅退院せず当センター母子入園となった。
訓練経過
当センター理学療法開始時、背臥位で上肢引き込み下肢外転位+、腹臥位では殿部拳上、双方共に拒否強く、受け入れられる姿勢は円背抱っこのみで、手足を触られることに関しては非常に過敏がみられた。追視は上下左右ともに良好であった。以上より、様々な感覚を受け入れられるようになること、姿勢変換を受け入れられるようになることの2点を方針とした。まず、受け入れ可能な抱っこ姿勢で様々な感覚入力を行い、刺激に対しての受容を高めた。また、支持面が狭くなること、頸部の位置で筋緊張の変化が見られたため、背臥位はタオルで頸部、股関節屈曲位から開始し、徐々に股関節、頸部を中間位へ近づけた。理学療法開始10日後には、背臥位をとれるようになり、徐々に床上姿勢変換時の拒否も少なくなった。次の段階として抗重力姿勢も開始し、坐骨支持を経験できるように促した。母子入園最終日には、手で玩具を握ること、足底接地での荷重ができるようになった。また、左右側臥位保持、頭部を支えた腹臥位でおもちゃを見ること、足底接地した端座位で頭部コントロールが少しできるようになった。
まとめ
今回、児の変化が見られた要因として、理学療法の方針による関わりが有効であったと考えられる。また児の変化に伴い、両親にも変化が見られ、児との関わりの中で笑顔が増えた。今後も両親を含めた方針のもと理学療法を進めていきたい。