日本重症心身障害学会誌
Online ISSN : 2433-7307
Print ISSN : 1343-1439
一般演題
P-1-G07 重症心身障害児(者)の理解語彙についての報告
−PVT-R・JCDIsとの検討−
赤沼 知佳畔上 恭彦金子 忍
著者情報
ジャーナル フリー

2014 年 39 巻 2 号 p. 309

詳細
抄録

はじめに 入所施設における重症心身障害児(者)の言語理解を評価するための標準化された検査はない。また、既存の検査では実施困難な場合や、詳細な結果を得ることができないことが現状である。そこで、施設生活内での理解語彙を調査するために、PVT−R(絵画語い発達検査)とJCDIs(日本語マッカーサー乳幼児言語発達質問紙)を用いて、比較・検討を行った。 対象 当施設入所者4名(男性2名、女性2名)。年齢23〜51歳。大島の分類1〜2で横地の分類がB2〜C4。簡単な指示理解が可能でPVT−Rの検査が実施可能な者。 方法 対象4名に対し、言語聴覚士(ST)がPVT−R、JCDIsの語と身振り版、田中ビネーV知能診断検査を実施した。また、ST3名、施設職員(介護士10名、看護師2名)にJCDIsの記入を依頼した。1人の対象者に対し介護者3名、ST3名で実施した。 結果 事例Aは精神年齢(MA)1歳8カ月、語い年齢(VA)3歳0カ月未満。事例BはMA2歳1カ月、VA3歳0カ月。事例CはMA2歳10カ月、VA3歳4カ月。事例DはMA3歳11カ月、VA4歳1カ月。JCDIsの理解語彙数の平均は、事例A介護422語・ST106語、事例B介護289語・ST180語、事例C介護275語・ST197語、事例D介護207語・ST279語。事例D以外は介護者が判断した理解語彙数がSTより高い傾向にあった。 考察 当施設に入所している4名を対象に、介護担当者とSTのそれぞれに理解語彙について調査した。事例A〜Cの理解語彙数に関しては介護者が多く、事例DはSTの方が多いと判断した。事例A〜CはMA3歳未満の値を示し、VAも3歳4カ月以下と低かった。一方、事例DはMA3歳11カ月、VA4歳1カ月と最も高い結果であり、日常生活のコミュニケーション場面で“No”の表現を明確に示していた。事例A〜Cは“No”を示せず、すべてに“Yes”と応答しており、受け手が理解していると捉え、介護者が理解語彙に関し過大評価していると考えられた。今後、STより評価結果を伝え、適切なコミュニケーションを図ることが重要と考えた。

著者関連情報
© 2014 日本重症心身障害学会
前の記事 次の記事
feedback
Top