抄録
要約
状況理解が良好にもかかわらず身振り以外の発信が困難な症例に対し、絵カード交換式コミュニケーションシステム(以下、PECS)などの補助代替手段を主とした言語指導後、2語連鎖様の身振り・カード発信が可能となった1例について報告する。
対象と方法
症例は8歳女児(初診時6歳)。診断名は脳性麻痺、先天性異常症候群(疑)他、横地案はB4−D。初期評価では移動は車椅子見守りレベル、言語理解は1歳前後であり、衝動性・多動性有、紙に対する執着があった。方法は、カルテ抽出による経過報告。指導期間は、CA 6:3〜8:10の59回である。便宜上3期に分けて報告する。
経過
1期:受信は遊びの中で身振りと音声対提示で示し、その後身振りを除外していった。7:0にままごと道具の成人語音声受信を獲得。身振り発信も同様に遊びの中で促し、7:3には動作・事物・否定など10種類以上を発信、それらを2語連鎖様に使用した。2期:身振り受信・発信を訓練室外、第3者へ移行。結果、ST以外に受信・発信できた。3期:PECS導入。7:6にカード交換を獲得、8:3には選択数が増加、8:7には2語連鎖表出(事物:事物)、8:10には文章ボードの使用を獲得し、「○○」「ください」と要求した。
検査結果比較
国リハ式SS法言語発達遅滞検査:身振り記号レベル1:0から音声記号レベル1:10相当へと向上した。
考察
遊びの中で課題を設定することで身振りの増加・自発を図り、能動的なコミュニケーションにつなげることができた。しかし、次段階の2次元ツールの導入は、紙に対する執着があることで容易ではなかった。これらには、PECSを導入しカード対好きな物の関係理解を促すことで対応した。結果、カード交換、弁別、文章要求がスムーズに獲得され、現在、身振り・カードでの2語文要求が可能となっている。これらは、カードが好きなものを表していることに気付き、遊び道具としてではなくツールとして理解できたためであると考えられた。