抄録
目的
重症心身障害児(者)(以下、重症児者)は随意運動の困難さや荷重経験の少なさから、筋の発達不全が生じ、筋萎縮や関節拘縮の原因となる。早期から筋の形態・構造といった質的評価を行い、的確な治療を行っていくことは重要である。近年非侵襲的に筋の形態・構造の評価を行う手段として超音波診断装置による輝度の計測が用いられている。本研究では重症児者と健常者の大腿二頭筋と半膜様筋を対象として輝度を比較し、筋構造の質的評価を行った。
対象と方法
対象者は運動能力が座位または臥位レベルの重症児者11名とした(以下、重症児者群;男6名、女5名、年齢48.2±7.8歳)。健常成人6名を対照群とした(以下、健常群;男6名、年齢20.5±1.6歳)。測定肢位は前傾腹臥位で、股・膝関節90°屈曲位とした。右大腿長の近位50%と30%の位置で、大腿二頭筋長頭と半膜様筋の横断面画像を得た(以下、それぞれBF50%、BF30%、SM50%、SM30%)。筋の横断面に対してヒストグラム解析を行い、重症児者群と健常群との間で輝度の比較をt検定を用いて行った。
結果
輝度の平均値はBF30%で健常群が35.7±7.1、重症児者群が55.1±13.1、BF50%で健常群が34.0±7.9、重症児者群が58.9±9.8、SM30%で健常群が36.4±12.7、重症児者群が60.2±14.6、SM50%で健常群が44.4±16.9、重症児者群が60.3±8.4であった。健常群と重症児者群の間で輝度に有意差がみられた部位は、BF30%、BF50%、SM30%であった(すべてp<0.05)。
考察
重症児者群で健常群よりもBF50%、BF30%、SM30%で輝度が有意に高かった。先行研究では神経筋疾患では輝度が増加すると報告されており、輝度の高さは筋細胞が脂肪や結合組織へ変化していることを反映していると考えられている。同様の変化が重症児者群でも起こり、輝度に有意差が認められたと考えられる。超音波画像診断装置を用いた輝度の計測により、重症児者の筋構造の質的評価が可能であると考えられた。