日本重症心身障害学会誌
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Print ISSN : 1343-1439
一般演題
P-2-E39 脳性麻痺児への音楽的活動を通したコミュニケーション支援
樫木 暢子崎原 すみれ
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2014 年 39 巻 2 号 p. 326

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抄録

目的 脳性麻痺アテトーゼ型の児童に対して、クイックトーカー(VOCA)を用いた音楽的活動を行い、支援者とのやりとりを通して、コミュニケーションスキル支援について検討することを目的とする。 方法 対象:特別支援学校小学部1年、女児。アテトーゼ型脳性麻痺、右外斜視。支援者や母親と目が合いにくく、他者に笑いかけることが少ない。手を出しながら問いかけると、「はい」のときにその手にタッチすることがある。 支援期間:20XX年5月〜20XX+1年1月に大学のプレイセラピールームで週1回1時間程度の活動を計22回行った。 結果 活動前期:導入として手遊び、オモチャ遊びまたは楽器遊び、歌遊びを行った。クイックトーカーでの活動選択(オモチャ、楽器、歌)、要求の確認(支援者からの「もう1回する?」の問いかけに、タッチで応える)を1試行とした。クイックトーカーのスイッチを押す音遊びから、徐々に絵カードに注目し要求の選択をするようになった。歌遊びでは支援者や母親とのやりとりはなかった。遊び全般では支援者や母親の顔を見る回数が少しずつ増えてきた。 活動後期:手遊びでは曲の途中で間を置くと、Aは身体に触られる前から笑顔になっており、支援者が身体に触れるとさらに笑顔になるようになった。また、中盤から、支援者や母親の反応を楽しむようになり、積極的に母親と関わろうとするようになった。 考察 ★他者との関わりと感情表出 活動後期では遊びの中で母親の顔を見る回数が増え、要求行動のタッチのときに他者の目を見るようになるなど、他者からの働きかけに応えるようになっていた。また、母親への働きかけが増え、Aが母親をコミュニケーションの対象としても認識したと言える。音楽という好きな遊びをAが使えるVOCAで選択したことで、(1)遊びを共有することによる他者への気付き、(2)他者との情動的交流が楽しいことへの気づきを促すことができた。

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© 2014 日本重症心身障害学会
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