抄録
重症心身障害者において、加齢や感染に伴い誤嚥を繰り返し経口摂取が困難になることがある。在宅の場合には、経管栄養を選択しないことが致命的な結果になることもある。今回、誤嚥性肺炎を繰り返し、極度の栄養障害により、生命の危機に瀕していた症例に対して、多職種で取り組み経口摂取を回復させることができたので報告する。
症例は48歳男性、難治性てんかん、知的障害、歩行不安定を認めていたが、45歳までは、自力での食事が可能であった。ただ、けいれんが生じると2-3日食事ができない状態が続いていた。47歳時に、誤嚥性肺炎になり、それまで40kgあった体重が徐々に低下した。その後、4回の誤嚥性肺炎を繰り返し、体重も24kgまで減少し、当センター紹介となる。受診時、寝たきりで、自力での寝返りや座位保持も困難であり、常に傾眠状態であった。医師による全身状態の評価、抗けいれん剤の調整、refeeding syndromeへの対応、病棟スタッフによる姿勢保持能力の評価、臀部にかかる体圧の評価、負担のかからない姿勢の検討、作業療法士、言語聴覚士による摂食介助法の検討、食形態の検討、管理栄養士による個別の能力に応じた食事の提供、自宅での食材のアドバイスなどを行った。その結果、すべて経口からの栄養摂取が可能になり、表情もよく笑顔もでるようになり、再び在宅となった。在宅になってからも、誤嚥なく体重も順調に増加している。当センター紹介前は、経管栄養は延命治療にしかならないといわれ、家族もあきらめかけていたが、兄の特に熱心な希望を受けたこと、また、初診時、ご本人がかすかにほほ笑んだように見えたことから、積極的な多職種連携で取り組んだ結果、回復できた1例を経験したので報告する。