日本重症心身障害学会誌
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P-2-F39 慢性便秘症に対して漢方薬の効果を認めた4症例
矢野 喜昭松田 俊二
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2014 年 39 巻 2 号 p. 336

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抄録
目的 重症心身障害児(者)(以下、重症児(者))では、基礎疾患、経管栄養の使用や多剤抗てんかん薬の内服等様々な原因により、慢性便秘症の合併を認める。治療は、主に緩下剤の内服や浣腸を行うが、自力排便を促進することは困難である。イレウスを合併する危険性もあり、重症児(者)にとって便秘症は重要な課題である。今回、慢性便秘症で排便コントロール困難な4症例に対して、漢方薬の効果を認めたので報告する。 症例提示 症例1:原因不明の精神運動発達遅滞、難治性てんかんの27歳男性。運動機能は座位、経管栄養を行い抗けいれん薬は3剤内服中。治療として麻子仁丸を開始、浣腸回数が減少した。 症例2:原因不明の精神運動発達遅滞、難治性てんかんの29歳男性。運動機能は座位、経管栄養を行い抗けいれん薬は4剤内服中。治療として麻子仁丸を開始、排便回数が増え、浣腸回数が減少した。 症例3:低酸素性虚血性脳症の27歳女性。運動機能は、座位不可能、経管栄養を行い抗けいれん薬は3剤内服中。大建中湯を開始したが改善せず、麻子仁丸に変更したところ、改善を認め緩下剤の中止が可能となった。 症例4:レノックス・ガストー症候群、重症アトピー性皮膚炎、食物アレルギーの37歳男性。運動機能は座位不可能、経管栄養を行い抗けいれん薬は7剤内服中。大建中湯を開始するも改善せず、ラクツロースに変更した。症状は改善せず、麻子仁丸を追加したが、著変なく、潤腸湯に変更したところ、摘便は必要だが排便回数が増えた。 考察 一般的に麻子仁丸は弛緩性便秘に有効、潤腸湯は皮膚の乾燥を伴う弛緩性便秘に有効である。今回の4症例では、臨床症状を考慮し薬剤を選択することで、治療効果が認めた。 結論 重症児(者)の便秘症に対する漢方治療は、臨床症状、身体所見を考慮した漢方薬を選択することで有効な治療となることが示唆された。今後、症例数を増やし、客観的に治療効果を評価することが必要である。
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© 2014 日本重症心身障害学会
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