抄録
目的
用手による振動(以下、振動)が、自然排便を促すことができるかを検証する。
方法
対象:自然排便回数が月5回以下で、浣腸で排便を促している患者4名
期間:2012年7月1日〜2013年12月31日
方法:1.腹臥位で大殿筋下端・大殿筋中央部・両大転子部・第4〜5腰椎周囲に各1分間に約60回の振動を実施する。2.振動は午前中に行い、浣腸は午後に行う。3.振動実施開始前後の腸蠕動音・自然排便と浣腸の回数を比較する。
倫理的配慮
対象者家族に研究の目的・方法・プライバシーの保護の承諾を得た。
結果および考察
A氏は振動実施直後より自然排便が見られるようになり、自然排便回数が月平均7回から月24回と増加し、浣腸回数が減少した。B氏は月平均1回から3カ月後に6回に増加し、6カ月後には10回に増加した。自然排便回数は増加したが、浣腸回数に大きな変化は見られなかった。C氏D氏は自然排便回数・浣腸回数共に変化は見られなかった。また、実施中B氏C氏には排ガスがたびたび見られた。これらは、大殿筋や両大転子部に振動をあたえることで下腹部周囲の筋肉が緩和し、大腸で副交感神経が優位に働き排便を促せたのではないか。また、第4〜5腰椎周囲に振動をあたえることで、「排便のつぼ」とされている大腸愈の刺激となり、腸蠕動が活発になり、排便や排ガスを促すことができたのではないかと考える。自然排便回数で比較すると4人中2人が1年間の合計で実施前より増えた。効果のあった2名は容易に腹臥位が可能で、振動実施中も基底面が安定した腹臥位がとれていた。残りの2名は複数の枕等を使用して腹臥位を保持する必要があり、基底面を確実に安定させることが困難であった。このことから安定した腹臥位を保持し、振動を効果的に伝えたことが良い結果につながったと考えられる。
結論
用手による振動は、安定した腹臥位を取れる重症心身障害者には自然排便を促す効果がある。