抄録
目的
重症心身障害児(者)への発達を促進する関わりの一つとしてアロマ剤や入浴剤、草花を利用した嗅覚刺激を行っている。しかし、気管切開を行っている準超重症児(者)は鼻呼吸ではないため、においの同定が制限されるのではないかと考えた。そこで本研究は、気管切開を行っている準超重症者への効果的な嗅覚刺激方法を検討するために、嗅覚刺激時の脳血流量の変化から、同定反応を明らかにすることを目的とした。
方法
研究期間:2013年8月2日〜26日、対象者:横地分類A1の20代準超重症者2名(女性)、嗅覚刺激:アロマオイルを含ませたコットン(A刺激)と無臭コットン(B刺激)を各々のシリンジに入れ、30秒かけて50mlの空気を鼻腔へ注入した(1分間の安静の後に刺激提示:計4回)。測定指標:近赤外分光法(NIRS)を用い、前額部に16chのプローブを装着して脳血流量の測定、ビデオによる行動観察を行った。なお、本研究はA病院倫理委員会で承認されており、研究趣旨および方法を口頭と文書で家族に説明し同意を得た。
結果と考察
A・B刺激ともに、刺激10秒前後で酸化ヘモグロビン(Oxy-Hb)と脱酸素ヘモグロビン(DeOxy-Hb)がやや低下し、その後緩やかに上昇した。刺激別に見ると、A刺激ではOxy-Hbが上昇し、B刺激時ではOxy-Hbは減少していた(1ch)。また、2名とも刺激提示回数が増すにつれてA・B刺激ともにOxy-HbおよびDeOxy-Hbの変化は減少した。臭いは、嗅細胞で感知して嗅球へと伝わり、その後情報処理をされて臭いとして認識される。脳血流の変化は、大脳皮質嗅覚野(眼窩前頭皮質)における情報処理段階の反応であると考えられる。その反応に刺激による違いがあったことより、においを同定していることが示唆された。
結論
気管切開を行っている準超重症者を対象に、鼻腔への嗅覚刺激時の脳血流量の変化をみた。その結果、刺激による変化の違いが見られ、においを同定していることが示唆された。