日本重症心身障害学会誌
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O-2-G03 アダラートカプセル®の内服により手術を回避できた食道アカラシアの1例
奥村 啓子安東 里真伊藤 正寛小川 勝彦山崎 正策
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2015 年 40 巻 2 号 p. 236

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抄録
はじめに 食道アカラシアは、食道の運動機能障害の中で、嚥下時の噴門の弛緩不全を有するもので、嚥下障害と胸痛、誤嚥などを主訴とする。緩徐に進行し、時間の経過とともに食道の拡張を招く。発生頻度は10万人あたり1〜6人である。 今回われわれは、食道の拡張を伴った食道アカラシアの患者にCa拮抗薬であるアダラートカプセル®を投与したところ、症状が改善し胃瘻造設等の手術を回避することができたので報告する。 症例 症例は知的障害、脳性麻痺で入所中の大島分類5の67歳男性。繰り返す誤嚥性肺炎のため、VF検査と食道造影検査により食道アカラシアの診断がついていた。また高血圧のため降圧剤を飲んでいた。アダラート®投与前には、胸叩き、スプーン噛み、「おなか痛い」と言って怒り食事を拒否することも多く、体重減少がみられていた。そのため以前の降圧剤に替えて、アダラートカプセル®(5)2カプセル分2(朝食と夕食の1時間前に内服)、ニューロタン錠®(25)0.5錠分1(昼食後内服)を行ったところ、不快な症状が消失、食思が改善し体重が増加した。またアダラート®投与前には食道造影検査で、食道内へのバリウムの停滞、食道の拡張、食道の正常蠕動波の消失および異常収縮がみられていたが、アダラート®投与後はすべて改善している。 考察 短時間作用型のアダラートカプセル®は、下部食道括約筋の収縮力を低下させ食道下端部の通過をよくすることを目的に使用するが、効果が一定せず、過度の血圧低下を招くこともあり、保険適応外使用である。われわれも厳重な血圧管理のもと投与方法の試行錯誤を行ったところ、現在の投与方法で、血圧も良好にコントロールできている。アダラートカプセル®の投与は高血圧を合併した食道アカラシアの患者に、試みるべき方法と考えられた。
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© 2015 日本重症心身障害学会
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