日本重症心身障害学会誌
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一般演題
P-1-C09 尿路感染を繰り返した重症心身障害者に猪苓湯が著効した1例
加藤 陽子小田 望木内 正子永江 彰子藤田 泰之種子島 章男口分田 政夫
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2015 年 40 巻 2 号 p. 260

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抄録
はじめに 重症心身障害児(者)の治療において、尿路感染症の対応に苦慮している。 今回、膀胱尿管逆流症を基礎疾患に持ち、尿路感染を繰り返し、抗生剤の予防内服を行うも効果みられず、猪苓湯が著効したので報告する。 症例 51歳男性。妊娠歴、分娩歴に異常なし。1歳ごろの突然の左半身けいれんと意識レベル低下を期に、てんかん、精神発達遅滞、脳性麻痺となり、5歳時に当園入園している。34歳時には血尿がみられ、38歳時には蛋白尿が出現し、腎炎が疑われた。48歳時に腎臓内科を受診したが、腎生検は不可能との判断で、アンギオテンシン2受容体拮抗薬などによる保存的治療の適応となった。同時期に院内での検査で、左膀胱尿管逆流症(grade2)と診断された。また2から3カ月に一度尿路感染も起こしている状態であったため、抗生剤の予防内服を開始した。開始後1年間は発熱も見られず、体調は安定していた。 しかし、1年経過したごろから、抗生剤の使用をやめると1カ月に一度、点滴加療を要する尿路感染を繰り返す状態となった。また、耐性菌も発生し、使用可能な抗生剤が少ない状態となった。 そこで、一般的に尿路感染に使用する漢方薬で利尿作用、抗炎症作用を併せ持つ猪苓湯を使用してみたところ、開始後1年半経過しているが肺炎による発熱が一度あったものの、尿路感染では一度も発熱はみられていない。 考察 尿路感染症には抗生剤治療を行い、膀胱尿管逆流症には手術による根本的治療が有用である。膀胱尿管逆流症が中年以降判明し、尿路感染症を繰り返すも、手術による治療が困難である場合に尿路感染予防に、耐性菌を発生させない猪苓湯も選択肢の一つとして考えられる。
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© 2015 日本重症心身障害学会
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