日本重症心身障害学会誌
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一般演題
P-1-C19 不動性骨粗鬆症を合併した重症心身障害者6名のデノスマブ治療の経過
冨永 惠子牛田 正宏永田 仁郎田沼 直之
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2015 年 40 巻 2 号 p. 265

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抄録
はじめに 重症心身障害児(者)は不動性骨粗鬆症を合併しやすい。昨年、府中療育センターでは長期入所者191人に対して骨粗鬆症スクリーニングを実施し175人(91.6%)が骨粗鬆症と診断された。骨粗鬆症と診断された女性6人に対し骨粗鬆症の治療としてデノスマブ(商品名プラリア®)の投与を開始したのでその経過を報告する。 症例 46歳〜73歳の女性6人、大島分類1、2が各々2人、4、5が各々1人。6人とも脆弱性骨折の既往あり。 治療計画 対象者6人に対し24カ月間、プラリア®の60mgを6カ月に1回皮下注射。全員活性型ビタミンD (アルファカルシドール)0.5μgまたは1.0μgを毎日服用。プライマリーエンドポイントは新たな脆弱性骨折の発症とした。重大な有害事象としての顎骨壊死等を発症した場合は治療を中止。投与後最初の1カ月間は血清Ca値を毎週測定。骨密度測定をプラリア®投与前と投与開始から6カ月後、1年後、2年後に実施。骨吸収マーカーのTRACP−5bと骨形成マーカーのP1NPをプラリア®投与前と投与開始から3カ月後、1年後、2年後に測定。椎体の新規骨折診断のため全椎体のX−Pをプラリア®投与前と投与開始から1年後、2年後に実施。 結果 血清Ca測定では補正Ca値において低Ca血症(8mg/dl以下)は0人であったが、補正Ca値が8.5mg/dl以下になった入所者にはアルファカルシドールを追加投与した。3カ月後の骨代謝マーカーは全例においてTRACP−5b およびP1NPともが治療前より低下した。現在まで顎骨壊死などの有害事象は発生していない。新規の骨折も認めていない。 考察 デノスマブは抗RANKL(receptor activator of nuclear factor kapper−B ligand )抗体で破骨細胞の分化を抑制することで骨吸収が抑制され、結果として骨密度を上昇させ骨粗鬆症を改善させる。今回デノスマブの投与を受けた6人はすべて3カ月後の骨吸収マーカーが低下したことから今後骨密度の上昇および新規骨折抑制が期待される。
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© 2015 日本重症心身障害学会
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