日本重症心身障害学会誌
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Print ISSN : 1343-1439
シンポジウム2:重症心身障害と生命倫理
特別講演1 障害者とともに生きる
−それを支える連続と不連続の思想−
仁志田 博司
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2016 年 41 巻 1 号 p. 23-27

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抄録
人間は一人では生きていけない生物であり仲間と共に生きる社会的存在である。子どもが「共に生きるあたたかい心」を母親から学ぶのは、自分以外の人が絶対的な愛を与えてくれることを認識し、私たちは一人ひとりが異なった存在なのに根源的にはつながっていることを感じるからである。その背景となる、連続した宇宙・私と貴方の連続性・時間と空間を越えた縦と横の連続性などから導かれる「連続と不連続の思想」を解説した。われわれの社会を形成している接着剤のような役目をしている最も大切なものが、「連続と不連続の思想」に基づく「共に生きるあたたかい心」である。あたたかい心を失ったときに人と人との心のつながりが失われ、その社会は一瞬にして崩壊し、人類の歴史の中で数多くのホロコーストと呼ばれる痛ましい大量虐殺がくり返されてきた。家族という小さな共存の単位でも、愛しあって生活してきた家族が、憎しみ合い、いがみ合い、そして崩壊することが稀ならず起こっている。あらためて、子どものときから母親等の養育者からあたたかい心を授受することの大切さを思う。
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© 2016 日本重症心身障害学会
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