日本重症心身障害学会誌
Online ISSN : 2433-7307
Print ISSN : 1343-1439
シンポジウム4:障害者虐待の現状と対策について考える
人権擁護としての虐待防止
宗澤 忠雄
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2016 年 41 巻 1 号 p. 71-77

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抄録

本論は、意思疎通・意思決定に困難度の高い人の虐待事例に基づいて、障害のある人に係わる人権擁護としての虐待防止のあり方を考察するものである。二つの虐待事例からは、家族と支援者がそれぞれの事情や都合を優先させ、障害のある本人の意思・ニーズを理解しようとする支援が不十分なまま代行意思決定と不適切な関与が積み重なるところに、虐待発生の構造的特質のあることが分かる。合理的配慮の一環としての意思決定支援の取り組みを進めるとともに、人権回復に難しさを否めない虐待への事後的対応に終始するのではなく、虐待の発生・重症化を未然に防止する取り組みが何よりも重要である。そのためには、虐待的関与と行動障害拡大の悪循環や虐待サイクル等、虐待発生の要因とメカニズムに留意した虐待防止の取り組みを進めることが求められる。

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© 2016 日本重症心身障害学会
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