日本重症心身障害学会誌
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シンポジウム2:重症心身障害児の在宅支援のあり方 −支援内容−
重症心身障害児の在宅支援における課題について
−作業療法士の立場から−
金田 実
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2016 年 41 巻 2 号 p. 194

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抄録
私が33年間、北海道立の肢体不自由児療育施設の作業療法士として、外来や地域支援(北海道全域の地域における子どもの療育施設への指導)において、様々な障害をもつ子どもたちと関わって来ました。1990年代以降、周産期医療の進歩により中枢性障害を持った子供たちの生存率は非常に高くなり、以前なら死亡していた子どもたちが生きていける時代になっていきました。しかしその反面、重症心身障害児が多く見受けられるようになってきたのも事実でした。  2000年頃前後の多くの重症心身障害児は、重症心身障害者施設入所移行を前提に家庭でケアされながら、肢体不自由児施設や地域の基幹病院への短期間の入所を繰り返して成人施設への入所を待つというのが北海道における現状だったと思います。しかし、最近では、子どもに対する胃瘻や気管切開を施すことで生命維持を図ることが普通になり、数多くの重症心身障害児に医療ケアが必要となってきていて、病院だけでは抱えきれず、家庭で家族が医療ケアを行いながら重症心身障害児をケアしていくことが中心になってきています。この子供たちが在宅での医療ケアを含めた療育を実現するためには、もちろん必要な時にすぐ医療が受けられることが最も重要ですが、その子自身の子どもとしての心身の発達(教育も含めて)を保証することや、家庭の環境整備(家屋改造も含めて)や家族を孤立させないマネージメントを行えるかどうかが重要であると痛感しています。作業療法士としては、重症心身障害児に対しては心身の状態への必要な発達的評価を実施した上で、ポジショニングを含めた姿勢管理を行った上で、子ども自身が人として楽しんで生きることが可能なように手指機能と知的レベルに合った遊び方やスイッチ操作の指導を行うことが現時点での中心的役割となっていますが、実際に上手く在宅支援が行えるためには数々の課題があることを実感しています。  <例として>・家族が障害を持った子供の日常の関わり方を理解・実践可能かどうか?・家族&母親(保護者)だけが孤立していないかどうか?・緊急時の医療ケアを含めての医療・医師との連携が確立しているか?・地域の訪問看護&リハおよび医療系機械業者サービスを受ける状態にあるのか?・地域の保健師や福祉・行政サービス等の利用理解が出来ているのか?・関係機関(教育機関をふくめて)の連携が取れて入るのか?  これらの課題について、OTの立場より具体的に報告したいと思います。 略歴 昭和57年3月 国立療養所東京病院付属リハビリテーション学院作業療法学科卒業 昭和57年7月 北海道立札幌肢体不自由児総合療育センターに作業療法士として就職 平成5年4月 同上 機能訓練課 作業療法係長 平成15年4月 北海道立旭川肢体不自由児総合療育センター 訓練課長 平成25年4月 北海道立子ども総合医療・療育センター(コドモックル)リハビリーション課長 平成28年3月 北海道立子ども総合医療・療育センター 定年退職 平成28年4月から現在まで 済生会西小樽病院 作業療法士(非常勤 月1回) 平成28年7月から現在まで 社会福祉法人 楡の会 子どもクリニック 作業療法士(非常勤 週4回) 現在に至る
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