日本重症心身障害学会誌
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一般演題
O-1-B15 マッサージ器はストレッチの代わりになり得るか
入岡 陽平松永 智行
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2016 年 41 巻 2 号 p. 215

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抄録
はじめに 痙縮筋に対する抑制効果として、宮良らは痙縮筋に直接振動刺激を実施し、5分間という短時間で痙縮抑制効果や関節可動域角度(以下、ROM)の改善を得たと報告している。今回は、マッサージ器による振動刺激でストレッチと同様の痙縮抑制やROM改善の効果が得られるかを検討する。 方法 対象は入所利用の痙性四肢麻痺者4名である。それぞれ介入前後比較試験を用いた。振動部位は左上腕二頭筋の筋腹とし、パナブレーターEV256(National松下電工社製)を使用した。周波数83.3Hz、振幅2.0mm、刺激時間5分とした。ストレッチは担当療法士が5分間実施した。評価項目はModified Ashworth Scale(以下、MAS)と他動ROMとした。刺激介入前後の差がMASで-1以下、ROMで5度以上を効果ありとした。 結果 対象者AとDは振動刺激、ストレッチともに効果があった。対象者Bはどちらの刺激も効果がなかった。対象者Cはストレッチは効果があったが、振動刺激は逆効果となった。 考察 対象者AとDは、振動刺激によってΙa求心性線維によるシナプス前抑制が働き、脊髄運動神経細胞の興奮性が抑制したと考えられる。対象者Bは骨格筋が線維化し、被刺激反応性が低下していることが考えられ、どちらの刺激においてもMASもROMも変化をほとんど認めなかった。対象者Cでは振動刺激後にMASが高くなった。これは振動刺激により筋紡錘が興奮し、当該筋が持続的に収縮をしたためと考えられる。これらの反応の違いには振動刺激の周波数や刺激時間が影響していると報告されている。また、刺激介入中に情動による筋緊張の亢進が顕著であり、環境の影響を少なからず受けていると考えられる。 まとめ マッサージ器がストレッチの代わりになり得るかは骨格筋の質や環境の影響により個人差がある。個別評価により効果が認められる場合は、関節可動域の維持・改善を目的にマッサージ器を使用することも示唆される。
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© 2016 日本重症心身障害学会
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