日本重症心身障害学会誌
Online ISSN : 2433-7307
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一般演題
O-1-B30 重症心身障害児(者)におけるCTを使用した骨粗鬆症の評価
住友 典子本橋 裕子石山 昭彦竹下 絵里齋藤 貴志中川 栄二小牧 宏文須貝 研司佐々木 征行
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2016 年 41 巻 2 号 p. 222

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抄録

はじめに 重症心身障害児(者)(以下、重症児者)は骨折のリスクが高く、骨粗鬆症の評価は重要である。骨粗鬆症の評価にはX線による骨塩定量(以下、DXA)が行われるが、重症児者は検査協力を得ることが難しい。Pickhardtら(Ann Intern Med 2013)は、成人の検討で腰椎のCT値で骨粗鬆症の診断が可能と報告した。またわれわれはデュシェンヌ型筋ジストロフィー患者においてもCT値が骨密度と相関すると報告した。 目的 重症児者においても腰椎のCT値を骨粗鬆症の評価に利用できないか検討する。 対象 当院に入院歴のある重症児者の中で、DXAと、何らかの理由で第1腰椎を含むCTをDXA検査から6カ月以内に実施したのべ11例を対象とした。年齢中央値は39歳(16-53歳)、男性8例、女性3例、大島分類は1が10例、2が1例であった。 方法 第1腰椎の椎体のCT値を3カ所で測定した平均値を2人の検者が算出した。その上でCT値と第2−4腰椎で測定されたDXAによる骨密度との相関の有無を回帰分析によって検討した。 結果 2人の検者間でのCT値には差を認めなかった。腰椎でのCT値(X)は骨塩定量(Y)の値と線形に相関し、Y=0.256+0.003Xで示される直線に回帰した。20歳以上50歳未満の8症例(23-45歳)でCT値110HUをカットオフ値としたところ、110HU未満の7症例は全例DXAでのZスコアが-2SD以下となった。 考察 重症児者でも腰椎のCT値は骨塩定量に相関し、CT値が骨粗鬆症の評価に有用であった。CT値のカットオフ値110HUを用い骨粗鬆症の有無を判別できたが、さらなる症例の蓄積と検討が必要と考えた。骨粗鬆症評価以外の目的でCTが撮影される頻度は高く、その際に骨粗鬆症の評価もできることは費用対効果が高い。DXAを実施困難な環境であっても、CT画像を用いれば骨密度評価が可能である。 結語 基礎疾患が一様でない寝たきりの重症児者においても、腰椎のCT値からDXAによる骨密度を予測可能であった。

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© 2016 日本重症心身障害学会
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