日本重症心身障害学会誌
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O-1-C02 重症心身障害児(者)のQOL評価における血清IGF-1値の有用性について
本家 一也清水 眞
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2016 年 41 巻 2 号 p. 223

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抄録

目的 各疾患では患者の主観的QOLが重要であり、様々な評価尺度が使用されている。しかし、重症心身障害ではその評価は困難であり、また、病態が多様なこともあり客観的な評価尺度もない。成長ホルモン(GH)は成人でも分泌されており、疲労回復など様々な働きをしている。睡眠障害や栄養障害、被虐待などで分泌不全になることもあり、GH分泌の状態はその人のQOLを反映しているとも言える。今回、当院の重症心身障害病棟入所児(者)において、GHに比べ血中濃度が安定しているインスリン様成長因子(IGF-1)を測定し、その値がQOL評価の指標となりうるかを検討した。 方法と結果 入院中の19歳から71歳の40名において血清IGF-1値を測定した結果、その値は成人の標準範囲の-2SD以下から+2SD以上まで様々で、男女ともに年齢と相関を認めたが、身長との相関は認められなかった。次に、若年の新規入院患者においてIGF-1値を定期的に測定し、その推移を検討した。在宅から措置入院となったノリエ病の4歳児では入院時のIGF-1は平均値だったが、入院後-2SDぐらいまで低下し、その後、元の値に回復した。一方、他病院から転院した2名では入院時には-2SDぐらいの低値で、入院後は徐々に上昇し、平均値以上になったが、1名では体重減少などに伴い一時低下することもあった。また、やや痩せがありIGF-1値が低値の成人患者2名において補食を行ったところ、体重は増加し、それに伴いIGF-1も上昇し、正常化した。 考察 重症心身障害児(者)においても血清IGF-1値は一定ではなく、いろいろな要因でかなり変動していると考えられる。低値の場合や低下する場合は適応障害や栄養障害などQOLの状態が良くない可能性が高く、何らかの対策を講ずる必要がある。 結論 定期的に血清IGF-1を測定することにより意思表示が困難な重症心身障害児においてもQOLの評価を行うことが可能であり、その値を分析することで治療やケアの見直しを行うことができる。

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© 2016 日本重症心身障害学会
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