日本重症心身障害学会誌
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Print ISSN : 1343-1439
一般演題
O-1-C08 破服する重症心身障害児(者)に対する安全な服の検討
−自己刺激行動の意図を考えて−
豊川 尚平宮寺 健司
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2016 年 41 巻 2 号 p. 226

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抄録
はじめに A氏は日常生活において破服により肌が露わになり、便に破いた生地が混ざっていることもある。A氏の破服は自己刺激行動と考えられる。本研究ではA氏が行う自己刺激行動の意図を考えた安全な服を検討した。 用語の定義 ・破服:服を噛み、破ること。目的自己刺激行動の意図を考えた安全な服を提供することができる。 対象 A氏 40歳代 女性脳性麻痺 精神遅滞 てんかん 視力障害方法 期間 2015年7月〜12月 方法 1)破服の意図を探る。 2)肌が露わにならずなおかつ安全な服を検討する。 倫理的配慮 所属施設の倫理委員会の承認を得た上で進めた。また対象者の家族に研究の趣旨を説明し、協力により対象者に不利益や負担が生じないことなどについて説明を行い、書類による承諾を得た。 結果 1.なぜ破服を行っていると思われるか職員へのアンケートを実施した。遊び、口唇刺激等の回答があった。破服状況について観察した結果、破服は主にデイルームで過ごしている時間帯が多く、破服時の表情は無表情が多かった。破服のきっかけとしては不明が多かった。破服部位は右袖が多かった。2.肌が露わにならずなおかつ安全な服の検討 1)試行第1期:市販品で普段着ている服より厚手のものや袖のない服を着用。2)試行第2期:生地を2枚重ね、右袖と胸を補強した服を着用。3)試行第3期:右袖を重点的に補強した服を着用。4)肌が露わにならない服(現時点ではTシャツの生地を3枚あて右袖と胸を重点的に縫った物)を提案した。 考察 A氏に破服をできなくするような関わりをするのではなく、破服をある程度できるような関わりを考え実践したことで、肌が露わにならずなおかつ安全に落ち着いて過ごすことができたと考える。 結論 ・A氏の破服が不快時のみに現れるものではなく、遊びなど様々な意図があることが分かった。・服の袖や胸を補強することで、自己刺激行動の意図を考えた安全な服を提供することができた。
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© 2016 日本重症心身障害学会
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