日本重症心身障害学会誌
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Print ISSN : 1343-1439
一般演題
O-1-D06 重症心身障害児者施設における歯科の役割
−よりよい食支援に向けた取り組み−
松野 頌平中嶋 靖潤宮本 昌子山野 恒一塩川 智司
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2016 年 41 巻 2 号 p. 233

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抄録
重症心身障害児者(以下、重症児者)は、幼少期から嚥下障害を多く認めることに加え、加齢に伴い嚥下機能が低下することが知られている。嚥下障害に適切に対応するためには、正常な摂食嚥下について十分に理解する必要がある。摂食嚥下運動は、先行期・準備期・口腔期・咽頭期・食道期の5期に分類されているが、なかでも、準備期・口腔期での「食塊形成」は、舌、下顎、口唇運動などの口腔機能の良否によって変化する。加えて、嚥下障害によって起こる誤嚥は咽頭期の障害であるものの、その原因は準備期・口腔期に多く存在することが報告されている。これらのことから、口腔へのアプローチにより口腔機能の改善を図ることは、誤嚥のリスクを軽減するために重要である。 重症心身障害児者施設において、多職種連携を実践する際のキーワードのひとつが「食支援」である。安全な経口摂取の継続には、加齢変化に対応した長期的なフォローアップが必要となる。当苑では、摂食嚥下を専門とする歯科医師が主導となり、2007年に多職種(医師、歯科医師、看護師、介護士、療法士、歯科衛生士、管理栄養士、調理師、放射線技師)から成る摂食嚥下チームを設立し、重症児者に対する食支援を行ってきた。当チームでは、嚥下障害症例について検討会を行うことに加え、必要時には嚥下内視鏡検査(VE)や嚥下造影検査(VF)による嚥下機能評価を実施した上で、食支援方法を決定している。 嚥下機能の経時的変化は各症例により大きく異なる。一般的に重症児者の嚥下障害への対応は困難と考えられているものの、それぞれの専門職(プロフェッショナル)が各症例の嚥下障害に対する共通認識を持ってゴールを目指すことにより、変化に応じた医療や介護、リハビリテーション等を提供できる可能性が大きく拡がると考えられる。今回、嚥下障害症例に対し長期的対応を行ってきた経験をもとに、よりよい食支援に向けた取り組みについて報告する。
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© 2016 日本重症心身障害学会
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