抄録
はじめに
重症心身障害児(者)では、胃瘻造設後に胃食道逆流症(GERD)を合併する例や、脊柱側彎症や胸郭変形により、胃から十二指腸への排泄が悪くなる例がある。胃瘻栄養管理が困難な5例に経胃瘻的空腸チューブ(PEG-J)による栄養管理を行ったので報告する。
症例1
8歳、男児。脳性麻痺。生後より経鼻経管栄養管理を施行していたが、嘔吐が多く8歳になっても体重8.6kgと体重増加不良あり。pHモニターでGERD 18.5%、腹部CTで上腸管膜動脈症候群を認めたため、胃瘻造設+PEG-J挿入し栄養管理を行い体重増加した。
症例2
11歳、男児。広範なPVLによる脳性麻痺、てんかん。経鼻経管栄養を施行していたが体重増加不良。腹部CTで脊柱の前彎変形により脊柱と胸骨に十二指腸移行部がはさまれ胃からの排泄不良。胃瘻造設+PEG-J挿入を行った。
症例3
12歳、男児。常位胎盤早期剥離、重症仮死で出生。脳性麻痺、てんかん。経鼻経管栄養管理を行っていたが徐々に注入に時間がかかるようになった。pHモニターでGERD 12%、上部消化管造影で十二指腸水平部の通過遅延あり。胃瘻造設+PEG-J挿入を行った。
症例4
16歳、男児。多嚢胞性脳軟化症による脳性麻痺。14歳時に誤嚥性肺炎で呼吸不全となり、気管切開+喉頭気管分離術施行。食道裂孔ヘルニアあり、経鼻EDチューブによる空腸栄養を行った。EDチューブの交換困難のため、15歳時胃瘻造設+PEG-J挿入施行。
症例5
32歳、女性。Rett症候群、四肢麻痺、重度精神遅滞。26歳時、敗血症で入院した際、気管切開、胃瘻造設施行。29歳時、喉頭全摘出術を行ったが、術後頻回嘔吐、胃からの排泄不良あり、PEG-J挿入を行った。
考察
側彎や胸郭変形の進行、脊柱と腸管の位置関係により胃からの排泄不良を来しており、胃瘻造設前の腹部造影CTや上部消化管造影検査による十分な評価が重要である。重症心身障害児(者)において、PEG-Jは有用な栄養管理法である。