抄録
目的
重症心身障害児者(重症児者)の腎機能評価では、これまでにも血清シスタチンC(Cys-C)、血清β2ミクログロブリン(B2M)の有用性が報告されている。しかし、重症児者全例に対してCys-CやB2Mの測定を行う必要性は低いと思われ、詳細な腎機能評価が必要な症例のスクリーニングが望まれる。そこで、患者背景と一般的な血液検査項目からCys-C高値を対象とする予測モデルを検討した。
対象・方法
対象は2015年4月から11月に旭川児童院入所中でCys-Cを測定した327例とし、234例を教師群としてStepwise法(変数増加法)にて説明変数の選択と予測モデルの作成を行った。予測モデルの内的妥当性の検証はReceiver Operating Characteristic(ROC)曲線の作成、曲線下面積(AUC)の算出を行い、外的妥当性の検証は93例を検証群として予測式の検証を行った。
結果
対象者327例中、Cys-C高値例は52例(15.9%)であった。予測モデルは性別、アルブミン、尿素窒素、クレアチニン、運動機能の程度(寝たきり)から作成した予測式が最適となり、内的妥当性の評価ではAUC:0.87、外的妥当性の評価においても検証群のAUCは0.93であった。また、教師群における感度・特異度分析では、予測式より計算される陽性確率のcut off値を0.22とした場合では、感度77.3%、特異度81.6%であった。
考察
今回作成した予測モデルの内容では、使用する説明変数は臨床的に腎機能を反映すると考えられ、モデルの妥当性が示された。予測モデルの評価では、内的妥当性はROC曲線、AUCともに良好であり、外的妥当性では検証群においてもAUCの差は見られないことから、重症児者に対して広く適応可能なモデルであると考えられる。また、感度・特異度も臨床的な実用性を満たしていると考えられる。
結語
重症児者に対する日常検査項目を利用した予測モデルの利用はより正確な腎機能評価が必要な症例のスクリーニングとして有用性が高いと考える。