抄録
目的
重症心身障害児(者)病棟では約80%がてんかんを併発し薬物療法でコントロールしている。てんかん発作は前触れなく突然起こること、重症心身障害児(者)は自分に起きている症状や体調の変化を言葉で伝えられないことから、てんかん発作の判別は特に難しく、対応する看護師も困惑する。そのため、看護師が患者に起きていることを早期に気付くことができず、てんかん発作の発見が遅れ、患者の苦痛を捉えられない場面もある。そこで看護師が同じ視点で観察し共通認識を図るツールはないか検討し、てんかん発作の観察表の作成を試みたので報告する。
方法
重症心身障害児(者)のてんかん発作の症状を観察ポイントとして記号を割り当て観察表に記入し、誰もが共有しやすい観察表を作成した。対象患者は発作の判別が難しい3名とした。
結果
共通認識を図るツールを活用し、てんかん発作の頻度や種類、発作時間、発作が起きやすい時間帯、発作周期を把握しやすくなった。その結果、継続した観察が可能となり、発作を早期に発見できるようになった。さらに看護師はてんかん発作時に適切な対処が可能となり、患者の苦痛緩和につながった。また抗てんかん薬の増量や変更したときの変化から有効性を判断することに役立ち、薬剤調整時の重要な情報源となった。
考察
自分に起きている状態を言葉で表現することが難しい重症心身障害児(者)だからこそ、看護師がいち早くてんかん発作に気付き対処する必要がある。看護師はてんかん発作観察表の作成から、重症心身障害児(者)の表情やサインをてんかん発作と結びつけ観察し、症状を共通理解することができた。さらにてんかん発作のコントロールが図れたことから、日常生活の充実にもつながったと評価できる。今後はてんかん発作観察表を重症心身障害児(者)に関わる他職種と共有していくことが課題である。