日本重症心身障害学会誌
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一般演題
P-1-F19 心肺停止等急変時を事前に話し合っていた重症心身障害児の他院での看取りの経験
豊島 智子雨宮 馨高嵜 瑞貴黒川 洋明
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2016 年 41 巻 2 号 p. 266

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抄録

はじめに 重い疾患や障害を抱えた子どもの終末期をどう支えるか。心肺停止状態後、救急病院に搬送され永眠した重症心身障害児(以下、重症児)の終末期に関わった経験一例を報告する。 症例 9歳女子。1歳5カ月脳炎後遺症により寝たきりとなる。5歳喉頭気管分離術を受けており、夜間は人工呼吸器を使用。某日、無呼吸から心肺停止し、A救急病院へ搬送され、1時間後蘇生したが脳死状態となった。翌日母から当センター主治医に連絡があり、急遽当院主治医と看護師で家族と面会。今後の対応について話す。事前に「助からないときは、点滴だらけにしたくない。自然にしたい。」と話していた母の意向を再確認し、同意のもと主治医と搬送先の医師と話し、家族が抱っこをする時間の許可を得た。その後、母に抱っこされ永眠。主治医が死亡診断書を書き、家族とともに自宅へ帰宅した。 考察 わが子が急変し、命が危ないときは誰もが冷静ではいられない。しかし、家族がさまざまな選択を迫られることも事実である。救急搬送された病院では、それまでの経過や家族の希望など知るよしもなく、救命処置に全力を尽くす。もし、死のときがもう避けられないのなら、この子と家族にとって最後のときはどうあるべきなのか。家族と話を積み重ねてきた主治医と看護師は、母子が直接肌を触れあい話す時間こそが大切だと考えた。救急病院での担当医の判断を尊重しつつも、家族の意向を伝えることも主治医および看護師の役割と考え、搬送先の医師と話し、抱っこをする時間の許可を得た。母は子を抱き、一生懸命生きた時間を振り返り、子どもは母のぬくもりを感じながら命を全うする時間が持てたと考える。 まとめ 他院で死を迎えねばならなくなった今回の事例では、本人と家族にとり望ましい時間の迎え方をサポートすることで関われた。今後、大切な子どもを喪った家族の心を、どのようにしてケアしていくのか課題であり模索中である。

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© 2016 日本重症心身障害学会
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