日本重症心身障害学会誌
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P-1-G04 広島県における新生児集中治療管理室退院児の動向と日常的に必要とする医療状況
澤野 邦彦松葉佐 正
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2016 年 41 巻 2 号 p. 270

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抄録

目的 新生児医療の進歩により救命率が向上した一方で、重篤な神経学的後遺症を残し各種医療ニーズを伴って家庭に帰る児も増えている。これらの在宅児の日常的医療ケアニーズに対する支援体制の構築は重要である。広島県におけるこれらのニーズの調査を行った。 方法 広島県内の新生児集中治療管理室(NICU)10カ所に、平成22年度から3年間(24年度は4月〜12月)の全退院児の退院先ならびに日常的に必要な医療項目をアンケート調査した。 結果 3年間の全退院児数(回答の得られた7カ所分のデータを解析)は5,097名で、死亡60名(1.2%)、家庭退院4,984名(97.8%)、他病院他病棟転院・転棟51名(1.0%)、重症児施設入所2名(0.04%)であった。家庭退院児の日常的医療項目をみると、経管栄養61件(24.3%)、酸素吸入53(21.1%)、体位交換34(13.5%)、頻回の吸引28(11.2%)、過緊張対応27(10.8%)、気管内挿管・気管切開14(5.6%)、その他34(13.5%)であった。総件数は251件で、家庭退院児数の5.0%を占めていた。他病院・他病棟転院・転棟児ではレスピレーター管理11(13.9%)、ネブライザー使用7(8.9%)もみられた。 結論 退院先の97.8%は家庭であり、年度による差は認められなかった。重症児施設での受け入れは23年度に2例あったのみで全体の0.04%に過ぎなかった。重症児施設の空床がなく受け入れ困難な状況が窺える。 退院先のほとんどを占める家庭退院児での日常的医療項目は、経管栄養、酸素吸入、吸引等医療的手技を要するものが多く、日中活動事業所利用に当たっては、これらに対応可能な所を選ぶ必要がある。対応可能な事業所の拡大は重症心身障害児本人のみならずケアに当たっている家族のQOL向上にも有意義である。 一方、重症児施設においては入所対応を増やす工夫も重要であるが、在宅支援の拡大もさらに求められる。

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© 2016 日本重症心身障害学会
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