日本重症心身障害学会誌
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一般演題
P-2-E17 ベッド上のポジショニングが有効であった上腸間膜動脈症候群の重症心身障害者例
迫 洋平高嶋 美和堤 諭香田代 峻一坂本 一馬江藤 安恵
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2016 年 41 巻 2 号 p. 299

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抄録

はじめに 上腸間膜動脈症候群(SMAS)を呈した重症心身障害者に、ベッド上ポジショニングと理学療法を行い、有効であったので報告する。 症例 23歳男性、出生時低酸素性虚血性脳症による脳性麻痺と診断された重症心身障害者(大島の分類1、横地分類B1)。Body Mass Indexは12.4で痩せ型。粗大運動は、寝返り不可で、ベッド上背臥位では、胸椎に左凸側彎変形があり、胸郭は右側に偏移し、腰椎の前弯の増強が生じ下肢が右側に倒れていた。背臥位のChailey姿勢能力発達レベルは1であり、身体左側臥位や背臥位は困難。自発運動時には、腰椎前弯を増強させながら右胸郭を骨盤に近づけるように腹部をねじらせた。21歳時に胃腸造影にてSMASと診断され、腹部膨満と胆汁の混じった多量の胃内容液のために、空腸までPEG-Jを挿入し栄養剤注入していた。 ポジショニングと理学療法の方法 腰椎の前弯が軽減するようなポジショニングを下肢関節可動域(ROM)測定と背臥位のChailey姿勢能力発達レベルの評価結果を参考に、自発運動に合わせて施行した。施行時間は約10時間。理学療法は週に2〜3回実施した。胸郭下肢ROMエクササイズを行った後、左下側臥位への姿勢変換とポジショニングを施行した。排液量の推移を平成26年8月から1年9カ月間で評価した。 結果 ベッド上ポジショニング導入後3カ月で排液量は減少した。同時期のChailey姿勢能力発達レベルは、構成要素群の得点が体重負荷の増加、肩甲帯と、下顎の肢位、上肢および手の肢位の動きに改善がみられた。23歳時点でのROMも改善した。 考察 本例のポジショニング変更で、背臥位で腰椎の前弯が軽減され、十二指腸水平部における通過障害が軽減し排液が減少した一要因であると考えられた。

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