日本重症心身障害学会誌
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一般演題
P-2-E18 重症心身障害児(者)の「24時間姿勢ケア」の取り組み
−症例報告−
山本 奈月
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2016 年 41 巻 2 号 p. 300

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抄録

はじめに 重症心身障害児(者)の姿勢保持の支援は多くの配慮を要する。今回、当院入所者に対し、病棟のニーズに焦点を当て、安楽な姿勢保持と安全な摂食を目的とした姿勢ケアプログラムを実施。対象者とご家族に口頭で説明し、当院倫理委員会で承認を得た。 方法 対象は脳性麻痺を呈する40歳代男性、GMFCSレベル4。背臥位では脊柱後弯、骨盤後傾位、股・膝関節屈曲位。接触支持面は下部体幹・臀部・両足部で、頸部・腹部・股関節内転筋群の緊張を高め安定させようとする。介助での端座位は骨盤後傾位・脊柱後弯。理学療法の目的は、1.体幹伸張させリラックスして過ごす、2.夜間ベッドでの姿勢の安定、3.活動参加や安全な摂食のための座位の安定である。介入は、1.下腿下垂のポジショニング、2.ベッド上での背臥位のポジショニング、3.活動や摂食のための座位保持装置の作製を実施・導入。評価項目は関節可動域(以下、ROM)、Goldsmith指数、胸郭の非対称(烏口突起〜上前腸骨棘の距離、以下、M.A.L.T.)、Chailey姿勢能力発達レベル、LIFEとした。 結果 1.M.A.L.T.は、ポジショニング前後で同側および対側の烏口突起〜上前腸骨棘間でいずれも距離が延長、介入後の体幹伸張を認めた。Chailey姿勢能力発達レベル背臥位はポジショニング前後でレベル1→3。2.夜間の背臥位はほぼ同様の結果。3.頸部伸展が減少し、摂食時のむせが減少。LIFEは介入前後で背臥位の項目で18点→19点。触診ではすべての姿勢で過緊張が減少。ROM、Goldsmith指数は変化なし。 結論 病棟での生活やニーズに着目、姿勢ケアを生活に導入した結果、安楽に過ごす時間が増え、安全に摂食を行えるようになった。病棟職員からも同様の感想が聞かれ、生活への介入が利用者の安全・快適につながった。この継続が、機能維持や変形の進行予防につながると期待している。今後も姿勢ケアの効果判定として、経年的・定量的な評価の他、機能面などの評価も行っていきたい。

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