日本重症心身障害学会誌
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P-2-E21 褥瘡部位を下側に向けた側臥位での姿勢管理の工夫
池田 菜摘吉田 雅紀鈴木 智裕高森 智春
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2016 年 41 巻 2 号 p. 301

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抄録

はじめに 側彎凹側である右側大転子に褥瘡が発生した症例に対し、褥瘡の治療過程で右浅め側臥位を継続する姿勢管理をして有効であったので報告する。 症例紹介 40歳代、男性。診断名:脳性麻痺、知的障害。改訂大島分類横地案B1。頸部右回旋、軽度左凸側彎で右へ脚倒し四肢拘縮あり。呼吸面は、ときどき吸引を要するため、口腔からの唾液の排出が確保できない背臥位は禁忌。姿勢バリエーションは、右浅め側臥位・左深め側臥位・腹臥位・座位保持装置での座位の4種類。 経過 右大転子に発赤が起こり、局所除圧マットとバスタオルによるポジショニングで対応していたが悪化し(褥瘡状態評価スケールDESIGN®9点/28点)、右側臥位が中止となった。右側臥位以外の3種類での姿勢変換で対応したが、新たに左肩に発赤が起こったため、右側臥位を継続する方法を検討した。 右側臥位の条件は、褥瘡部位が床に接しないことと、口腔からの唾液の排出であり、それらを満たす右側臥位用の姿勢保持装置(以下、側臥位保持装置)を製作した。体幹の支持面の狭さと支持性の弱さから大転子への過剰な荷重がされていた状況を、この側臥位保持装置により全身を持ち上げて広範囲に支持し、圧の分散を図ることができた。 側臥位保持装置は、乗せ方に厳密さが求められたため、以下の対応をとった。(1)乗せ方の手順を写真と文章で細かく示したマニュアルを作成し居室に掲示した。(2)病棟で伝達学習会を開催。資料や骨模型を用いて、身体的特徴と圧迫してはいけない部位を説明し乗せ方を実演した。(3)チェックポイントを定め、乗せたスタッフ以外で確認していく体制をとった。 その結果、側臥位保持装置を導入して15日後、褥瘡の改善が認められた(DESIGN®2点)。 結語 褥瘡の治療過程で、側彎凹側であり褥瘡部位が下になる右側臥位を継続できたのは、姿勢設定と側臥位保持装置の運用の適切さにあったと考える。

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© 2016 日本重症心身障害学会
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