日本重症心身障害学会誌
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一般演題
P-2-E23 筋緊張の強い超重症児への関わり
−生活上の感覚刺激に対する反応に焦点を当てて−
佐藤 雄太
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2016 年 41 巻 2 号 p. 302

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抄録
はじめに 筋緊張の強い超重症児において、筋緊張緩和への関わりは非常に重要である。しかし筋緊張亢進の要因については、心身や薬剤等の影響が複合的に絡むことや的確な訴えができないため、要因の特定が難しい。超重症児のA氏は、突発的な筋緊張亢進を毎日繰り返し、ケアの介入方法に苦慮していた。そこでA氏独自の筋緊張のスケールと観察表を作成し、一日の生活で受けている感覚刺激と反応を明らかにした。その上で生活上の介入をした結果、筋緊張が減少したので報告する。 対象者 A氏、10歳代、男性。生後11カ月時くも膜下出血発症。後に気管切開、胃瘻造設している。痙性四肢麻痺で自発的な四肢の動きは無く、表情の変化に乏しい。30分以上筋緊張亢進が持続することがあり、薬剤調整も随時行っていたが筋緊張亢進は改善されなかった。 方法 1.A氏の筋緊張のスケールを作成、基準を0〜3に設定した。 2.観察表を作成しA氏の24時間の生活の様子を介入前、後それぞれ11日間、経時的に記録した。 3.筋緊張スケールの度合いとして高い3、 2の積算時間と、ジアゼパム坐剤使用回数を介入前、後で比較した。 結果 介入前、筋緊張スケール3の11日間の積算時間は618分、筋緊張スケール2は1985分となり、午前中や、痰の貯留や吸引、排泄、体位変換等のタイミングで筋緊張亢進が多い状況があった。介入前の結果から生活上苦痛となり得る刺激を推測し、身体、環境面の対応を統一し介入した。介入後、筋緊張スケール3、 2共に積算時間が減少した。ジアゼパム坐剤使用は、介入前1回、介入後0回だった。 考察 筋緊張のスケールと観察表の作成により、情報の共有、共通認識が得られ、生活上の刺激と反応の傾向が明らかになった。その傾向に対して生活上の介入をしたことで筋緊張緩和に至ったことから、一連の介入方法は有効であったと考えられる。また今回の結果から、A氏の筋緊張亢進は生活上の重要なサインであると認識することができた。
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© 2016 日本重症心身障害学会
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