日本重症心身障害学会誌
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Print ISSN : 1343-1439
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P-2-F05 障害を持つ我が子に導かれてきた母親の経験と意味づけ
諏訪 亜季子大西 美智惠
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2016 年 41 巻 2 号 p. 305

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抄録
目的 重い障害を持つ我が子と共に在宅で暮らし続けている母親の経験を詳細にたどることで、その経験の意味づけを明らかにすることである。 方法 研究協力者に、ライフストーリー・インタビューに従って半構成的面接を実施した。データ収集および分析には、桜井らによる対話構築主義におけるライフストーリー法に則って、研究協力者のストーリーラインを抽出した後、人間的経験の意味を捉えて、我が子とともに歩んできた経験に解釈を加えた。 結果 研究協力者は、分娩時の障害で重い障害をもつこととなった我が子と共に、在宅支援サービスを受けながら二人で暮らしている40歳代の女性(Cさん)である。インタビュー所要時間は150分で、調査期間は2010年3月から10月であった。分析の結果、[あぁこの子生きるんやなぁ][自分も頼られる人間][何よりもこの子の母親でいたい][何とか二人で生きてゆく][常に我が子に導かれてきた]の5つのストーリーラインを抽出した。Cさんは、自身の幼いときの経験もすべて今の自分の強さを作る源である。また、社会の動きが自分のやりたい方向、歩み出したい方向に後押ししてくれ、どんな苦難に遭遇しても、「横を見たらいつも側にいて笑ってくれる我が子が居たから頑張れた」と語り、経験すべてが今の自らの強さを形成する価値ある経験だったと意味づけていた。そして、重い障害を抱えつつも常に自分のことを見守ってくれている我が子を人生のパートナーとして、共に幸せになりたいと願っていた。
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© 2016 日本重症心身障害学会
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