抄録
目的
本研究では、重症心身障害児(以下、重症児)をもつ母親らを対象として、余暇活動や母親らが企画運営する取り組みの支援過程において、母親のエンパワメント獲得を目的とした。母親らのエンパワメント支援を進める上で、現状と課題、そして母親のニーズを検討するための基礎情報を得ることを目的とした。
方法
重症児をもつ母親らが集まり情報共有および情報交換を行っている「Aの会」においては、定期的に子どもとその母親を対象とした企画運営を行っている。具体的には、子どもの学校の長期休み期間中に、子どもと母親が楽しむ機会を設けようというものである。一般のボランティアや学生が参加し、日常的には接点のない世代との交流をはじめ、当日初めて参加する子どもや母親が地域の居場所としての存在を高める機会ともなっている。
結果・考察
母親らが学校の春休み期間中に企画した取り組みの準備過程では、母親らによる意見の交換が活発になされ、日頃の母親同士のコミュニケーションが双方向的であることが伺えた。また、企画の実施可能性については、母親間の検討のみならず、福祉専門職や地域のキーパーソンなどに助言を仰ぐなど多様な視点から検討を重ねていた。さらには、母親一人ひとりが役割分担し楽しみながら準備を進めていく姿が大変印象的であった。互いの支え合いなども見受けられ、まさに母親同士がピアサポートをしながら取り組んでいた。Aの会などに所属していない家族や行政窓口などと日常的なつながりがない家族は、家族以外とのつながりや地域の社会資源とのつながりがないことも多く見受けられる。そのため平成28年8月には新たな企画を計画しており、障害のある子ども、その母親らが「音楽」をきっかけに出会い、つながることを期待している。本研究はJSPS科研費(20382666)の助成を受けたものである。