日本重症心身障害学会誌
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P-2-F09 医療的ケアが必要な児と重症心身障害児を対象とした保育園運営の取り組み
遠藤 愛鈴木 保弘
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2016 年 41 巻 2 号 p. 307

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抄録
はじめに、医療の進歩により出産時に救える命が増え、比例して医療的ケアが必要な未就学児(以下、医療的ケア児)も増加している。しかし既存の療育施設をはじめ、医療的ケア児が保育を目的として長時間利用できる施設はほとんどない。今回、医療的ケア児や重症心身障害児を対象とした長時間保育を児童発達支援事業と居宅訪問型保育の制度を用いて実施している障害児保育園ヘレン(以下、ヘレン)の取り組みを紹介する。ヘレンは、2014年9月に東京都杉並区で障害や医療的ケアの有無にかかわらず、すべての児が保育を受け、保護者が働くことを選択できることを目的として開設。対象は未就学児で、主治医から集団保育可能と許可を得た医療的ケア児や重症心身障害児等である。利用には、居住自治体で受給者証の交付が必要である。利用料は、児童発達支援利用料と居宅訪問型保育利用料または独自保育料を要する。居宅訪問型保育とは、子ども子育て支援法に位置づけられる制度で、児の居宅においてマンツーマンで保育が行われ、ヘレンが連携園となる。利用料は居住自治体に支払っている住民税額の応能負担である。独自保育とは、居宅訪問型保育制度が施行される前に児童発達支援事業での長時間預かり実現のため、ヘレン独自で設定した保育である。保育料もヘレン独自で決めた額で、現在は独自保育から居宅訪問保育への切り替えを行っている。保育時間は8時00分から18時30分。重症心身障害児クラス(5名)と重症心身障害児を除く障害児クラス(10名)があり、年齢別クラス編成ではない。開園から2年が経過し、今後もニーズがある地域を中心に複数の開園を予定している。医療的ケア児を巡っては、多くの保育園が、看護師を常駐させられないなどの理由で受け入れを断っている。当施設を先行事例にして、全国の多くの自治体や法人・施設が、この問題に対する意識を広げ、障害児保育問題解決に向けて官民協働して取り組んでいくことが必要と考える。
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© 2016 日本重症心身障害学会
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