抄録
はじめに
重度心身障害者は自力で体移動が出来ず褥瘡のリスクが高い。その予防のためにエアマットを使用することは効果的であり推奨されている。当施設でも在宅時に褥瘡が発生しエアマットを使用し入所後も引き続いて利用されている利用者が数名いた。エアマットは圧の切り替えによって長時間の皮膚への圧迫を防ぐことができるが、ベッドを移動した後のコンセントの入れ忘れ、熱がこもりやすい、ベッド上でのケアがしにくいなどの難点もあった。今回入所前からエアマットを使用していた利用者に対して体圧分布測定を実施しエアマットの必要性を評価し体圧分散マットへの移行を試みた。
方法
在宅時に褥瘡を認めた後にエアマットを使用し始めた三人の利用者に対して褥瘡リスクアセスメントツールを用いてリスクを評価した。エアマット使用時と体圧分散マット使用時の体圧分布を測定した。体圧が多くかかる部位に関してポジショニングやマットの種類を検討した。体圧分散マットへ変更後褥瘡発生の有無を評価した。
結果
褥瘡リスクアセスメントの結果は3名ともOHスケール、ブレーデンスケール共に高リスクであった。圧測定ではエアマットの方が仙骨部等局所に対する圧は低いが、他の体圧分散マットでも圧はそれほど高くないことがわかった。褥瘡スクリーニング評や圧測定の結果を元にポジショニングや使用するマットの種類を決めた。エアマット離脱後も新たな褥瘡の発生は無かった。
考察、まとめ
重症心身障害者にとって褥瘡発生のリスクは局所の圧迫だけでなく関節のこう縮、筋緊張亢進等の身体的特徴から発生する摩擦とずれが原因となるものが多い。褥瘡予防のためマットの選択、個別の好発部位の把握、ポジショニングの工夫をチームとして取り組みエアマット使用の可否が検討出来た。