抄録
はじめに
重症心身障害児者(以下、重症児者)施設の多くは、生活主体の療養環境と医療体制とを併せ持ち、多職種の職員がその日常を支えている。その中で、重症児者の高齢化や機能低下に伴い、急変時の対応には常に不安を感じていると思われるが、その不安は職種によって様々であると予想される。また、急変時における一次救命処置(BLS)には正確な知識と技術が必要である。今回A施設では、救急体制の質の向上を図るために多職種合同のBLS講習会を開催した。そこで、急変対応時の問題点、BLS講習の効果、および、今後の課題などを検討したので報告する。
対象者・方法
対象者:重症児者施設に勤務する職員
看護職(23名)・生活支援員(9名)・OT(1名)
方法:日本救急医学会認定BLSコースを受講1)講習前および講習3カ月後に、BLSに関する認知度、知識などに関するアンケート調査を実施2)講習3カ月後に蘇生人形を使用し習熟度を確認結果BLS受講および実施経験は生活支援員より看護職の方が多かった。講習前のアンケートではBLSの認知度は低く知識は曖昧であったが、講習後ではいずれも改善された。さらに、講習後の習熟度では正しく実施できるようになった職員が多かったが、技術習得には幅があった。一方、講習前と比べ、後にはBLSに対する不安をより強く感じた職員が多かった。
考察・結論
急変の場面に遭遇する機会が多い看護職においても、受講前のBLS認知度、知識は比較的曖昧であった。受講後、多くは改善されたが、習熟度には差がみられており、今後も定期的に知識・技術を確認していくことが必要と思われる。一方、受講後、より不安を持つものが増えたのは、前には心構えができていなかったのに対し、急変が常に起こり得ることを強く認識するようになったためと考えられる。今後は、講習を継続するのみならず、急変時の役割分担やシミュレーション教育を取り入れたシステムの構築をしていくことが重要と思われる。