抄録
背景 医療的ケアの必要な子どもと家族が地域で安心して暮らすために、小児においても、地域の在宅医と病院との連携が求められている。 目的 当院在宅医療支援室が行っている、医療的ケアの必要な子どもに対する在宅医との連携の現状、成果、問題点について報告する。 当院での取り組み 1.頻回の入院や救急受診を繰り返している 2.幼い兄弟もおり、病院受診が容易でない 3.退院前から、頻回な医療的介入が必要と考えられる 4.医療デバイス交換のために、毎月の受診が必要 5.療養環境に合わせた呼吸器などの設定変更を必要とする 6.遠方で、救急外来受診が難しい、などの問題を抱えた医療的ケア児と家族に対し、地域の在宅医を紹介し、患者家族が暮らしている地域の在宅医と病院との連携を進めている。 結果 89人(男50人 女39人)の患者に対して在宅医との連携が可能となった。対象者の年齢は0歳から38歳(中間値9歳)であった。病院の主科は、総合診療部(74%)、神経科(15%)、血液腫瘍科(4%)、その他(7%)であった。頻回の入院や救急外来受診が無くなり、在宅生活が安定した患者や、成人患者が地域の地域包括ケア病棟を利用できたなどの成果が見られた一方で、在宅医との関係が難しくなり、他の在宅医を紹介したケースもあった。また、小児在宅患者を診ていただける在宅医を見つける手段がない、病院も家族も在宅医療の内容を十分理解していない、親と在宅医との理解に時間を要する、在宅物品の提供が容易でないなどのさまざまな問題点も明らかになってきた。 考察 医療的ケア児が、地域で安心して暮らしていくためには、在宅医と病院との連携が重要であるが、さまざまな解決すべき問題が存在する。 結語 医療的ケア児と家族を支援するための地域の在宅医と病院との真の連携を構築するためには、患者家族と、在宅医の紹介元である施設が両者を十分に支援することが重要である。