抄録
はじめに A氏は介助歩行の際、笑顔をみせ喜ぶ様子がみられる。しかし、現状では十分な散歩時間は確保できていない。A氏は自室でドア叩きがあるが、ドア叩きで訪室すると笑顔をみせる。そのため、A氏のドア叩きには「外に出たい」「人と関わりたい」という思いがあるのではないかと考えた。そこで、A氏が喜ぶ散歩について検討し、散歩を継続して行えるようになった結果を報告する。 研究方法 対象はA氏。40代女性。診断名は最重度知的症害、てんかん、骨粗しょう症。横地分類A4。研究期間は20XX年3月〜8月。方法はドア叩きなどについて1期から3期に分け調査した。1期ではドア叩きの現状を調査した。2期では毎日10分間介助歩行を行い、表情、行動を記録した。3期では歩行後に5分間下肢のマッサージを行った。 結果 1期ではドア叩きが1日あたり平均4.6回あった。2期では1日あたり平均2.9回に減少し、1期と比較して歩行後のドア叩きが減少した。また、歩行時は笑顔がみられた。さらに、2期終了前、ドア叩きを減らすため、自室ドアに専用バーを設置し、自室ドアの開放を行った。3期ではドア叩きが1日あたり平均3.0回あったが、2と比較して歩行後のドア叩きはさらに減少した。また、歩行後の下肢のマッサージは笑顔がみられた。 考察 2期、3期でドア叩きが減少したのは、介助歩行後に眠っていることが多く、その理由として歩く欲求が満たされたことと、ほどよい疲労感が睡眠を促したためと考えた。また、専用バーを設置し自室の「みえる化」を行い、散歩時間と担当者を決めて取り組んだ。この見直しはご家族にも喜ばれた。研究終了後も毎日の散歩が継続できたのは、これらによりA氏と接する機会が増え、行動制限する対応に支援者の意識変化が生じたからと考えた。今後も研究期間にかぎらず、継続できる支援を考えていきたい。