日本重症心身障害学会誌
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一般演題
O-1-B26 低体温を呈する超重症心身障害児における人工呼吸器加温加湿器と回路の影響について
−熱線なし加温加湿器使用下の吸気ガス温度測定と熱線あり加温加湿器へ変更による体温変化−
佐々木 正吾豊野 美幸坂本 知子沢石 由記夫
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2017 年 42 巻 2 号 p. 188

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抄録
目的 重症心身障害児は基礎代謝が低く、運動が乏しいことから熱産生が少なく低体温になりやすい。今回、入院中の低体温を呈する超重症児に対し、人工呼吸器の加温加湿器と回路を熱線あり加温加湿器(パシフィコメディコ社製PMH7000)へ変更することで低体温が改善するか検討したので報告する。 対象症例 12歳、男児。生後4カ月時の窒息による低酸素性脳症のため四肢麻痺となった。大島分類1、TPPV管理施行(フィリップス社製トリロジー100)、呼気弁付き熱線なし回路、加温加湿器(パシフィコメディコ社製PMH1000)をダイヤル6.5で使用。多重の掛物と複数の保温具を使用し、体温34.5〜35.5℃である。 方法 着衣、掛物の外的要因を同等の条件とし、PMH1000使用下およびPMH7000へ変更後の体温と心拍数を2時間おきに24時間測定し2群間比較検定した。また、PMH7000へ変更前後3週間の体温を起床時・日勤時・就寝前に分類し2群間検定した。PMH1000使用中の口元温度はPMH7000の温度センサーを用いて測定。PMH7000はチャンバー温度37℃、口元温度40℃に設定。 結果 同等の条件で平均体温・心拍数はPMH1000:34.9±0.3℃・57.9±6.9bpm、PMH7000:35.8±0.3℃(p<0.01)・64.9±7.3bpm(p<0.05)と有意差を認めた。PMH1000を使用中の患者口元平均温度は32.1±0.3℃であった。変更前後3週間の平均体温は、起床時で前35.3±0.4℃、後35.7±0.5℃(p<0.05)、日勤時で前35.1±0.6℃、後35.4±0.5℃(p>0.05)、就寝前で前35.1±0.6℃、後35.6±0.4℃(p<0.01)で起床時と就寝前で有意差を認めた。また、変更後は保温具を使用しなくても体温を維持できるようになった。 結語 低体温を呈している人工呼吸器管理中の超重症児に対して、熱線なし加温加湿器の使用は、吸気ガスが低温となり低体温の要因になると考えられ、熱線あり加温加湿器を使用することによって低体温を改善することができた。
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© 2017 日本重症心身障害学会
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