抄録
はじめに 脳梗塞は生活習慣病と深く関係するが、当園に入所している重症心身障害児(者)は、食事療法や薬剤投与など、管理された生活の中でも発病が見られている。当園の入所者に見られる脳梗塞が、どのような傾向にあるのかを調査した。 研究方法・対象 脳梗塞の既往のある男性4名、女性1名の計5名(男性2名、女性1名の死亡者を含む)。大島分類は1が3名、2が1名、4が1名。横地分類はA1が1名、B4が1名(死亡者3名を除く)。対象者の脳梗塞発病日から過去に遡り、生活習慣病の目安となる血圧、総コレステロール、HDL−C、中性脂肪、BMIを調べた。 結果 ・脳梗塞発病年齢は52歳1名、57歳3名、59歳1名で平均年齢56.4歳であった。 ・脳の梗塞部位はラクナ梗塞が4名、脳幹梗塞が1名であった。 ・血圧は、食事療法と一時的な内服療法で、正常血圧から1度高血圧で経過していた者が1名、その他4名は基準値範囲内で経過していた。 ・総コレステロールは正常値範囲より高値で治療していた者が1名、正常値範囲より高値だが治療せず経過した者が2名、正常値範囲内で経過していた者が2名いた。 ・HDL−Cは50歳から正常値範囲を低下した者が1名、その他の4名はほぼ正常値範囲内で経過していた ・中性脂肪は30歳代には正常値範囲より高値で食事、内服治療していた者が1名、50歳代で正常値範囲より高値になった者が1名、その他の3名は正常値範囲内で経過していた。 ・BMIからは肥満と診断される者はいなかった。 考察 施設に入所し、健康管理された生活を送る重症心身障害児(者)の中には、肥満がなくても脂質代謝異常になることがあり、脳梗塞に警戒する必要がある。また、血圧が基準値範囲内で経過しているにもかかわらず脳梗塞を発病している例から、重症心身障害児(者)の脳には穿通枝動脈にもともとの器質的な障害や、脳内の循環状態が悪いことが考えられる。