日本重症心身障害学会誌
Online ISSN : 2433-7307
Print ISSN : 1343-1439
一般演題
O-1-C25 重症心身障害児(者)看護の視点
−A施設の看護師の実態調査から見えてきたもの−
迫水 夕織逸見 聡子口分田 政夫
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2017 年 42 巻 2 号 p. 196

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抄録

はじめに 重症心身障害児(者)看護は特殊な領域であるが、看護師が利用者をどのようにとらえ、どのような視点でケアを実施しているのかはこれまで明確にされてこなかった。研究背景には当施設の環境があり、利用者は皆発達年齢が似ているため、生活年齢よりも発達年齢を重視した生活環境の構築がされている現状がある。今まで重症心身障害児(者)施設に勤務する看護師が利用者をどのような視点で捉え看護を提供しているのかを明確にするための研究は行われていない。そこで本研究では当施設に勤務する看護師がどのように利用者を捉え日々の看護を提供しているのか調査を行った。 研究方法 実態を探るための質問紙をチェック式にて作成、最終項目のみ自由記載できるよう記述式とし、チェック項目について集計を行った。その結果を踏まえ、1人の利用者に対する重症心身障害児(者)の適応評価を看護師が実施した。調査は無記名とし個人が特定されないよう配慮した。 結果 実態調査結果を受け重症心身障害児(者)の適応評価(横地ら)を複数の看護師で実施し評価のバラツキを検討した。その結果、看護師がケアを行うときに発達年齢や生活年齢を重視した関わりをしているのではなく、他者や環境との関係性の中で培われた利用者の今発揮できる力に応じたケアを実践していることが明らかになった。 考察 看護教育の中で成長発達を学ぶ場面は看護学校の小児看護学のみであり、当施設に入職した看護師に対しても学びの場はない。各病棟のオリエンテーション場面でも現在の利用者の様子が主体となっていることも影響しているのではないかと考える。利用者が持つ障害の重度化が進む中で看護師が中心となり利用者の生活を考える場面も増えてきている。その中でより質の高いケアを実施していくために身体的特徴から利用者を看るのではなく利用者が持っている力を十分に引き出せるケアを実施してくことが必要である。

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© 2017 日本重症心身障害学会
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