日本重症心身障害学会誌
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O-2-C11 特別支援学校における喀痰吸引等特定業務の登録状況
長江 秀成栗田 和洋別府 玲子鈴木 昌代
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2017 年 42 巻 2 号 p. 213

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抄録
重度障害児教育では適切な医療的ケアを提供し、安心して教育を受けられる環境作りが教育現場で求められる。2012年の介護福祉士法改正で特別支援学校においても研修を受けた教員の在籍などを条件に「特定行為事業者」として登録し、喀痰の吸引等が実施できることになった。さらに、診療報酬上でも2012年4月に「介護職員等喀痰吸引等指示料」が新設され、従来は患者や医療機関の負担であった指示書等の文書料が診療報酬で支払われることとなった。今回この制度の特別支援学校における利用状況を調査した。 方法 全国の都、府、県の教育委員会へアンケート調査を実施し、全国の特別支援学校の特定業務事業者の登録状況を調査した。 結果 特別支援学校が特定行為事業者に登録している県は26県、登録していない県は18県、不明は3県で、やはり制度が十分に利用されているとは言えない結果であった。登録している県のほとんどで教育委員会が登録研修機関となっており、県を挙げて制度へ取組む姿勢がうかがわれた。登録した理由として、看護職員が医療的ケアを行うことが前提としつつも「教員が医療的ケアを行うことで、自立活動の指導がしやすくなり、児童生徒の教育の充実につながるため。」という意見があった。一方で、登録していない県では、その理由として「配置された看護師が医療的ケアを行う。」というものがすべてであった。 考察 結果から、制度を利用している県とそうでない県では、医療的ケアに対する考え方に相当な違いがあることがわかった。「専門職に任せる」といった考えを否定するものではないが、喀痰吸引の知識、技術も教員のスキルの一つではないだろうか。また、制度を利用することで、患者負担の軽減につながると同時に、連携する医療機関においても診療報酬が算定できるなど、コスト面からも有用な制度であり、研修期間や費用の適切化など、積極的な取組を促すシステム作りが必要と考えられた。
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© 2017 日本重症心身障害学会
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