抄録
はじめに ヒトメタニューモウイルス(hMPV)は強い感染性から長期入院施設などでの集団感染例が報告されている。当院の療養型病棟において11例のhMPV集団感染が発生したが、重症例はなく、医療型病棟を含めて他の部署へ波及することなく収束できたので報告する。 事例 当院療養型病棟(入所者44例、年齢7-55歳、中央値31歳)において発熱者1例を確認した。当該患者を個室隔離し、hMPV迅速検査陽性よりhMPV感染症と診断した。その後、ホールでの食事やリクリエーション時の接触によると思われる新規hMPV感染患者の発生を認めたため、ホール使用禁止、職員の病棟出入り規制や標準予防策徹底、見舞い中止、リハビリテーション中止などを行った。最終的に感染者は11例(男性7例+女性4例、年齢14-43歳、中央値28.5歳)だった。規制の解除には約1カ月を要したものの重症者はなく、重症者の多い隣接する医療型病棟など他の部署への波及も認めなかった。 考察 長期入院施設でのhMPV集団感染では、複数病棟にわたる感染波及も報告されている。集団感染の早期収束や他部署への波及阻止には、早期診断と感染予防策の徹底の必要性を改めて実感した。 結論 重症心身障害児(者)施設ではヒトメタニューモウイルス集団感染の可能性があり、発生時には、早期診断と感染予防策の徹底が必要である。