日本重症心身障害学会誌
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一般演題
O-2-B27 薬剤耐性菌保菌者の情報を共有するための工夫
−シンボルマークの表示を試みて−
前 由美
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2017 年 42 巻 2 号 p. 222

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抄録
はじめに 重症心身障害児(者)(以下、重症児(者))は、呼吸や循環、免疫力などに異常を来しやすく、感染症に罹患すると重症化しやすい。近年、薬剤耐性菌保菌者(以下保菌者)が増加し、コホーティングしているが離床した際には保菌者であることが識別しにくくなり確実な感染対応ができない問題が生じていた。耐性菌伝播防止のためには重症児(者)に関わるすべての人と情報共有できるよう工夫が必要である。 対象・方法 当施設の利用者で横地分類(改訂大島分類) A1の保菌者(MRSA・ESBL・AmpC)10名を対象に、シンボルマーク(黄色のスマイルマーク)を車椅子に装着した。また、外部の関係者への案内用にリーフレットを作成し、車椅子毎に手指消毒剤を設置した。これらについて、保菌者の家族(代諾者)からインフォームド・コンセントを得た。また院内感染制御チームと倫理委員会に承認を受けた。利益相反はない。 結果 当施設の行事には、保菌者が非保菌者と同スペースで参加している。以前は、他職種やボランティアに感染対策を口頭で説明していたが、確実な情報提供ができていなかった。しかし、シンボルマークを装着し関係者にリーフレットを用いて説明することで情報が共有され、適切な感染対応(標準予防策と接触感染予防策)ができるようになった。家族(代諾者)には快諾され、他職種からは容易に保菌者を把握できて良いとの感想が聞かれた。 考察 施設で暮らす重症児(者)は、家族や多職種、ボランティアなど多くの人が日常的に接している。耐性菌の伝播を防止するためには、関わるすべての人が確実な感染対応をしなければならない。これまでは、保菌者がわかりにくく、陰性・陽性を繰り返した場合はさらに情報が混乱しやすかったが、シンボルマークで容易に情報共有が出来た。今回の取組みが動機付けとなり、シンボルマークの運用が「感染症予防対策マニュアル」に明記された。今後は、確実な感染対応が継続出来ているかの検証が必要である。
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© 2017 日本重症心身障害学会
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