日本重症心身障害学会誌
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一般演題
O-2-C23 重症心身障害児 (者)における末梢静脈路確保における超音波の有用性の検討
小笠原 真志本橋 裕子須貝 研司竹下 絵里石山 昭彦小牧 宏文中川 栄二佐々木 征行
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2017 年 42 巻 2 号 p. 226

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抄録

はじめに 重症心身障害児(者)(以下、重症児)では末梢静脈路確保が必要となることが多い。四肢麻痺や四肢関節拘縮のため、末梢静脈を目視、触知できず、末梢静脈路確保に長時間を要することもある。近年一般小児の末梢静脈路確保困難例への超音波の有用性が報告されている。重症児では四肢の変形のため技術的な困難さが存在する可能性がある。 目的 重症児の末梢静脈路確保における超音波の有用性、安全性、検者間の信頼性を検討する。 方法と対象 2016年4月から2017年6月の期間に当院に入院歴のある重症児の診療録を後方視的に調査し、末梢静脈路確保に超音波を用いた患者を抽出した。静脈路確保までに要した穿刺回数、血管に留置できた針のゲージ数に関する情報を収集した。 結果 3名の医師により患者15名、計24機会の超音波下での末梢静脈路確保時の情報が得られた。患者年齢は平均23.2(SD14.6)歳。全例が大島分類1で、末梢静脈の触知、目視ができず、トランスイルミネーターの使用下でも静脈路確保が困難な患者であった。また、全例が普段から静脈路確保までに1時間以上・複数回の穿刺を要していた。超音波下で静脈路確保が可能であったのは22機会(92%)で、不可能であったのは2機会(8%)であった。静脈路確保までに要した回数は平均1.3回(最大2回)であった。通常重症児に対しては24Gの留置針が用いられることが多いが、自験例では22機会中20機会で、22Gの留置針を留置できた。全例で合併症を認めなかった。体動が強い患者は難しい傾向にあった。3名の医師の間で成功率に差は認めなかった。 結論 重症児に対して超音波による末梢静脈路確保は少ない穿刺回数で太い血管留置針を留置することができ、合併症もなく施行でき、末梢静脈路確保の困難さが予測される患者では、早期に使用を検討しても良い方法である。現在、誰でも施行可能な、汎用性の高い、使用手順の作成を行っている。

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© 2017 日本重症心身障害学会
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