抄録
はじめに 重症心身障害児(者)は、さまざまな原因で尿路結石を来しやすいが、疼痛を訴えることができず、また腹部XPや超音波検査(以下、US検査)では腸管ガスや便塊などで結石の診断が困難な場合もある。今回われわれは結石性腎盂腎炎で体外衝撃波結石破砕術(以下、ESWL )等を行った1症例を経験し、この経験を機に他の入所者について検討し、さらに2例にESWLを行ったので報告する。 症例 症例1: 36歳男性。大島分類1で胃瘻造設状態。4剤の抗てんかん薬を内服中である。これまでUS検査では尿路結石は認めていない。今回急性腎盂腎炎から急速に敗血症、DICを合併したため他院に救急搬送した。CT検査で左尿管結石を認め、ステントを留置後、経尿道的尿管結石除去術とESWLを施行した。症例2:33歳女性。大島分類1で胃瘻造設状態。2剤の抗てんかん薬を内服中である。過去のUS検査で異常はなかったが、今回のUS検査で新たに右腎中極に11mm大の結石と水腎症を認めたため、ESWLを施行した。症例3:49 歳女性。大島分類1。10年前に骨粗しょう症のため約3年間活性型ビタミンD3製剤を内服したが、高Ca血症を認め中止した。US検査で腎結石を疑う所見があったが、症状がなく、腎機能も正常であるため経過観察をしていた。しだいに結石が増大し、直径13mmの腎結石を複数認めたため、ESWLを施行した。 考察 当施設の入所者58名(平均年齢46歳)のうち尿PHが8以上の者は36名、無症候性細菌尿3+は14名、塩類尿を32名に認めている。また過去3年間のUS検査で結石を認めた者は38名に及ぶ。多くは無症状であるため経過観察をしているが、今回の3例の経験より、US検査で結石がなくても腎盂腎炎が疑われた場合は尿路結石による閉塞を常に念頭に置くこと、またUS検査で結石を疑われた場合は丁寧に経過を追い、変化があった場合は積極的に除去をめざすことが重要であると考える。