日本重症心身障害学会誌
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O-2-C27 既存の気管カニューレで対応困難な患者における受注生産した気管カニューレの使用経験
鈴木 理恵白石 一浩
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2017 年 42 巻 2 号 p. 228

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抄録
背景 気管切開(気切)後の合併症として、気切孔周囲の皮膚トラブル、気切孔や気管内の肉芽、腕頭動脈瘻などがある。側彎の進行などに伴い、気管カニューレが挿入困難になることもある。また気切孔の大きさや形状によっては、リークを生じることもある。当院では、従来は既存の気管カニューレの種類を選択した上で、ガーゼの枚数や固定法などで挿入長の調整やリークの補正を行っていた。しかし補正がしきれない、固定法が複雑化してケアの時間が延長する、ガーゼ下の気切孔が観察し難いなどの問題が生じていた。そこで個人に合わせた長さや角度で受注生産した気管カニューレ(受注カニューレ)を用いることになった。今回、気切の長期経過後の患者5名における受注カニューレの使用経験について報告する。 方法 受注カニューレ(泉工医科工業)は、CT画像を基に患者ごとに個別に設計して作成された。受注カニューレ使用前後の呼吸状態やCT画像などを比較評価した。なお受注カニューレの作成・使用および本発表について、本人または保護者の同意を得た。 結果 患者の年齢は20〜44歳、気切からの期間は11〜25年間、疾患は筋ジストロフィー3名・痙性四肢麻痺2名だった。全例が寝たきりで、常時人工呼吸器を使用していた。受注カニューレ使用前の問題点は、気管壁へのカニューレの接触5名、大きい気切孔からのリーク2名、フランジの接触による皮膚トラブル2名、側彎症の進行による挿入困難1名だった。使用後は、全例でガーゼによる挿入長やリーク補正の軽減が得られ、気切孔周囲の観察やケアが容易になった。 考察 気切後に長期的に良好な状態を保ち、晩期の合併症を予防するには、気管カニューレの適切な選択や固定が重要である。患者個々に合わせた受注カニューレは、既存カニューレで対応困難な場合の有用な手段となるであろう。
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© 2017 日本重症心身障害学会
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