日本重症心身障害学会誌
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P-1-E04 当院短期入所事業の現状と課題(平成28年度実績から)
尾崎 勉松田 光展
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2017 年 42 巻 2 号 p. 230

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抄録

はじめに 日本重症心身障害福祉協会は毎年全国重症心身障害児施設実態調査を行っている。平成29年度(同28年度実績)の調査に回答するにあたり、当院短期入所事業に関する情報を収集、分析した。そのデータから現状と課題を報告する。 方法 平成28年度当院短期入所者のデータを収集し、質問項目に沿う形で分類、分析を行った。一部平成27年度の調査結果を参考にした。 結果 当院短期入所の対象地域は多摩地域の9市4町。平成28年度の利用実人数は242人、延利用日数は10,851日、延人数は1,614人であり、これらの平均利用日数は7日/月であった。医療的ケアを尺度とした超重症、準超重症児者の実人数はそれぞれ65人、77人であった。両者の延べ日数の合計は5,350日で、全利用者の49%が濃厚な医療的ケアを必要とする方々であり、その内人工呼吸器装着者の実人数は28名、延利用日数は1,801日で、超重症・準超重症児者の33.7%を占めた。 考察 今回の実態から約半数を超重症・準超重症児者が占め、その内3割超が人工呼吸器装着者であった。調査結果の比較は今年度の全国の調査結果の発表を待たねばならないが、前年の調査では当院短期入所者のうち超重症、準超重症児者の延べ日数は6,119日と全国平均(620.9日)の約10倍であった。人工呼吸器装着者に関しても全国平均(200日/年)の10倍超の値(2,172日/年)であった。これらの数値から介護者の負担軽減を含め、当院短期入所事業は特に濃厚な医療的ケアが必要な方々の在宅生活支援という役割を果たしていると言ってよい。一方、利用希望の偏在による空床の発生や希望に一部対応できないこと等の課題が残る。今後、家族を対象に実施予定の満足度調査の結果等を踏まえ、利用する側から問題点を調査、分析し、さらに利用者のニーズに合致した事業として継続、発展を目指していくことが、今大会のサブテーマである「うまれてきてよかったと思える社会作り」の一翼を担うことにもなると考える。

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